北海道大と東京大、九州大などの研究チームは、ロシア・シベリア地域で森林火災が大幅に増えると、日本や中国でも大気汚染の影響による死者が年間数万人増え、経済的損失は数百億ドル規模に達する恐れがあるとするシミュレーション結果を公表した。論文は12日までに、地球環境学の専門誌に掲載された。
乾燥した大陸性気候のシベリアでは、毎年のように森林火災が発生。PM2.5など微粒子状の汚染物質を放出し広範囲に影響をもたらす。地球温暖化の進展で件数増が予想される中、どのような影響が生じるか、健康や経済面も含めた試算はされていなかった。
北大の安成哲平准教授(大気科学)らは、火災による汚染物質の発生量が近年で最悪クラスだった2003年のさらに2倍、火災が増えたと仮定したケースなどについて、気候や大気汚染、人々の健康に及ぼす影響をシミュレーションした。
その結果、大気汚染の影響はシベリア周辺地域にとどまらず、日本や中国などの東アジア諸国にも波及。疫学的な解析で、呼吸器疾患などによる死者数が日本では2万2000人、中国では6万7000人の規模で増加し、経済的損失もそれぞれ数百億ドル規模になることが分かった。
安成准教授は「森林火災による大気汚染から経済へのインパクトまで複合的に初めて評価できた。政策立案の基礎データに使うことも期待できる」と話している。 (C)時事通信社
シベリア森林火災増で日本も損失=大気汚染など影響試算―北海道大など
(2024/06/13 12:41)