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津波から命を守るためには 久保田崇・元陸前高田市副市長

 高知県や静岡県をはじめ、南海トラフ地震を想定した津波対策が全国各地で議論されています。津波から命を守るには、どうすればよいのでしょうか。

 私は岩手県陸前高田市において2013年2月に開始された東日本大震災検証委員会の委員長として、1,757人の死者・行方不明者を出した陸前高田市の検証報告書の作成に携わりました。

 ◇生死を分けたのは、何か?

 報告書の中でまとめた「本検証作業から得られた主な反省と教訓」の第一に挙げたのが、「避難が何より重要」ということです。「何を当たり前のことを」と思われる方もいるかもしれませんが、避難行動をしっかり取っている人は、それほど多くないのです。

 実際、陸前高田市の全世帯を対象としたアンケートからも、そのことが見て取れます。

 地震発生時にいた場所が津波浸水域となった人で、当日の行動について情報が得られた人のうち、被害がなかった人は津波到達前までに8割の人が避難していたのに対し、犠牲者の場合はその割合は5割程度に止まり、4割の人は避難をしていませんでした。

 これに対し、校舎が津波により水没した気仙小学校(児童数94人)と気仙中学校(生徒数93人)をはじめ市内の小中学校の児童・生徒のうち、学校の管理下にあり教職員とともに避難行動を取った児童・生徒は素早く避難行動を開始したことで、幸いにして全員無事でした。

 このことから、人的被害を防ぐためには、とにかく「逃げる」ことが大切であることが分かります。

(出典) 『陸前高田市東日本大震災検証報告書』(陸前高田市、2014年)


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