厚生労働省は、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の利用で病院の窓口が混雑しないよう、本人認証を行う機器の運用システムを来春までに改修する方針を固めた。顔や暗証番号による認証手続きが難しい患者に対し、これまでは病院などのスタッフが目視確認や認証作業のため窓口カウンターと患者との間を何度も往復していた。改修後は少ない動きで済むようになる。
 マイナ保険証による本人確認では通常、患者は医療機関や薬局の窓口でカードリーダーにカードを置き、画面上の顔の画像か暗証番号で認証する。ただ、高齢者が顔を近づけ過ぎるなどしてカメラがうまく反応しないケースが全国の病院窓口で多発し、混雑の原因となっている。車椅子の人は画面に近寄れないことも。暗証番号だと間違える恐れがあるため高齢者は敬遠しがちだ。
 こうした状況に対処するため、政府は、患者の同意を得た上で病院・薬局職員がマイナ保険証の顔写真と本人を照合する目視確認を法律上容認。医療現場で一定のニーズがあるとみている。
 しかしこれも煩雑さが指摘されている。現行システムでは、職員がカウンターの外に出て患者の顔を目で確認した後、内側に戻って端末を操作し、「目視確認モード」に切り替える。それを終えると再び患者の元へ戻り、診療情報などの提供同意手続きを行うために機器の画面をタッチしてサポートする。複数回往復する必要があり、医療現場から「非常に使いづらい」との声が出ていた。
 そのためシステム改修では、職員がカードリーダーの前にいる患者の元で目視確認し、カウンター内に戻らずその場で画面をタッチし、認証できるようにする。配信されたプログラムの更新で改修が完了するため、医療現場に特別な作業や費用は生じない。同省はまた、カードリーダーの開発メーカーの協力を得て顔認証の精度向上に取り組む。 (C)時事通信社