障害者の地域生活を支えるグループホームは、入所施設からの移行を目指す国が整備を進め、近年大きく増加した。一方、サービス類型や報酬の拡充に伴い、実績が乏しい事業者の参入も相次ぎ、質の低下などが指摘されるようになった。厚生労働省は運営実態の透明化を図ろうと対策に乗り出している。
 グループホームは、少人数の利用者が地域の中で自立して共同生活するための施設で、主に夜間に食事や入浴などの介護サービスを提供する。日中も支援が必要な重度障害者への対応が課題となり、厚労省は2018年、職員が24時間常駐する新たなサービス類型を創設。報酬も手厚くし、受け入れ体制を強化した。
 これにより、民間企業などの参入が急増した。同省によると、今年2月時点の事業所数は全国で約1万3500カ所に上り、18年の約1.6倍になった。今回問題となった「恵」も、18年に最初のホームを愛知県内に開設している。
 ただ、経験の少ない事業者が開設したホームが増えたことで、トラブルも発生している。同省の有識者会議では「障害の特性や程度を踏まえた支援が適切に提供されていない事例が散見される」などの指摘があった。
 厚労省は今年4月、各事業所に対し、利用者家族や福祉の専門家らによる「地域連携推進会議」の設置と、会議メンバーの施設見学を義務付けた。運営状況などを報告させるもので、担当者は「透明性が確保され、地域に開かれたホームになれば」と期待する。 (C)時事通信社