生殖補助医療の進歩は多くの女性に不妊治療の選択肢を提供してきたが、500人に1人の割合で見られる絶対的子宮性不妊のケースでは現行の医療での挙児は不可能だ。そうした中、絶対的子宮不妊の女性に妊娠・出産の選択肢を提供する手技として子宮移植が注目されている。米・Baylor University Medical CenterのGiuliano Testa氏らは、自施設で施行した絶対的子宮性不妊女性に対する子宮移植の長期的転帰を評価、移植成功率および子宮グラフト生着後の生児出生率は高いJAMA2024年8月15日オンライン版)に報告した(関連記事「米、子宮移植33例の6割で生児出産」)。

2016年9月〜19年8月の移植例が対象

 2011年8月、世界で初めて脳死ドナーからの子宮移植が成功して以来、世界中で100件以上の生体/死亡ドナーからの子宮移植が施行されている。子宮移植による正確な生児出生数の報告はないが、世界中で70人以上の生児出生が推計されている。2024年5月1日時点で、米国では子宮移植48件、生児出生30件となっている。

 ダラス子宮移植研究(DUETS)は、子宮移植の長期的転帰を評価するもので、レシピエントが子宮グラフト摘出術を受けるか少なくとも1回の出産経験をエンドポイントとした登録研究だ。DUETSは2016年に目標登録数10例で開始し2018年に20例に修正、2016年9月〜19年8月に移植が施行された。レシピエントは全例が自身の卵子を用いた体外受精・胚移植を受け、研究開始から最初の8例は移植6カ月後、以降のレシピエントについては移植3カ月後に単一胚移植が施行された。子宮グラフト摘出術は、1または2回目の分娩後に施行。出生児のフォローアップは小児科医の訪問診察で行われた。

 主要評価項目は、子宮移植の有効性(子宮移植後、少なくとも1回の生児出産と、それを可能にする子宮グラフトの生着期間)、副次評価項目は安全性(レシピエントの生存率、レシピエント、生体ドナーおよび出生児における合併症の発生)とした。

移植成功率70%、移植成功の全例が生児出産を経験

 701例の候補者からレシピエント20例〔年齢中央値30歳(範囲20〜36歳)、アジア系2例、黒人1例、白人16例〕を登録、絶対的子宮性不妊の内訳は、先天性子宮欠損症(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群)が18例、良性疾患による子宮摘出術の既往が2例。生体ドナーは424人のドナープールから選ばれた。生体ドナー18例の年齢中央値は37歳(範囲30〜56歳)だった。

 ドナー子宮摘出術に伴う有害事象として、開腹術13例中2例、ロボット支援子宮摘出5例中2例にグレード3以上の術後合併症(尿管内血栓による尿管閉塞、尿管損傷など)が生じたが、いずれも治癒した。生体ドナーの提供後の追跡期間中央値は5年3カ月(範囲4年5カ月〜7年4カ月)で、追跡期間中に臨床的変化は認められなかった。

 子宮移植失敗は6例(死亡ドナー2例中1例、生体ドナー18例中5例)で、移植後2週間以内に発生した。移植に成功した14例は全例が出産、うち2例は2回出産した。7例が初回、2例が2回、5例が3回以上の胚移植後に生児出産し、胚移植当たりの全生児出生率は43%だった。母体・産科合併症は、成功した妊娠の50%に発生し、最も多かったのは妊娠高血圧症候群2例(14%)、子宮頸管機能不全2例(14%)、早産2例(14%)だった。出生後3年8カ月(範囲8カ月〜6年2カ月)の追跡期間において、出生児16人に先天奇形は見られなかった。

 以上から、Testa氏らは「子宮移植は技術的に可能であり、グラフト生着後の高い出生率と関連していた。有害事象は一般的であり、医学的および外科的リスクはレシピエントだけでなくドナーにも影響した。先天異常や発育の遅れは現在までの時点で生じていない」と結論。研究の限界として、症例数が少ないこと、単一国での検討であること、子宮移植は高額で一般化が困難なことを挙げている。

編集部