27日投開票の衆院選で、与野党は少子化対策の強化を訴えている。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は、2023年に過去最低となる1.20を記録。少子化に歯止めがかからない中、各党は公約で、教育無償化など子育て世帯の負担軽減に主眼を置いた。しかし、財源確保について議論は深まっていない。
◇「教育無償化」各党アピール
岸田前政権下でまとまった「加速化プラン」には、児童手当拡充や、親の就労の有無に関係なく保育所を利用できる「こども誰でも通園制度」の実施をはじめ、年3兆6000億円規模の対策が盛り込まれた。自民、公明両党はプランを踏襲する考えだ。
野党は、プランの内容をさらに充実させた施策を掲げた。立憲民主党は児童手当を拡充し、18歳までの子ども全員を対象に月1万5000円を支給。日本維新の会は出産費用の無償化を目指し、保険適用やクーポン支給に取り組む。
各党の公約では教育支援策が目立つ。自治体が独自策を講じることで地域差が生じる中、国が関与して格差是正を図る狙いだ。自民は高校無償化や、大学などの高等教育費の負担軽減を拡大する。
立民は公立小中学校の給食費無償化、国公立大学の授業料無償化を掲げる。維新は義務教育に加え、幼児教育・高校で所得制限のない完全無償化を実現すると主張。共産党は国公私立を問わず、直ちに大学、短大、専門学校の授業料を半額にすると訴える。
◇支援金制度に反発も
少子化対策の財源確保に向け、政府は26年度から公的医療保険に上乗せして徴収する支援金制度を開始予定。歳出改革や賃上げにより、実質的な負担は生じないと繰り返し説明してきた。
これに対し、野党は支援金制度について「子育て増税だ」などと反発。立民は、日銀が保有する上場投資信託(ETF)を政府に移管した上で、分配金収入と売却益を少子化対策に充てると表明した。維新は子どものための予算枠を独立させ、国内総生産(GDP)の一定割合を配分すると訴える。国民民主党は年5兆円程度の「教育国債」を発行し、子育てと教育・科学技術の予算を倍増させる。
ただ選挙戦では、各党とも国民の負担増を具体的に語る場面は少ないのが実情。対策に必要な財源確保に関する議論は低調となっている。 (C)時事通信社
負担減に主眼=深まらぬ財源確保の議論―各党公約・少子化対策【24衆院選】
(2024/10/21 07:03)