英・University Hospital Southampton NHS Foundation TrustのMark Edwards氏らは、消化器外科領域の大手術を受ける65歳以上の高リスク患者2,498例を対象に、心拍出量モニタリングに基づく輸液および低用量強心薬の静脈内投与による循環動態管理の有効性と安全性を国際多施設ランダム化比較試験(RCT)OPTIMISE Ⅱで検討。その結果、通常管理と比べて術後感染の有意な減少は認められず、術後24時間以内の急性心イベント、特に頻脈性不整脈が増加したBMJ2024; 387: e080439)に発表した(関連記事「周術期の抗菌薬、来年改訂GLの推奨ポイント」)。

30日以内の術後感染を通常管理と比較 

 OPTIMISE Ⅱ試験では11カ国55施設において、65歳以上かつ米国麻酔科学会(ASA)術前状態分類2以上で所要時間90分超と予想される選択的消化器外科手術を受ける2,498例(平均年齢74歳、女性57%、ASA分類3/4が50%超)を登録。心拍出量モニタリングに基づく循環動態管理を行う介入群と、心拍出量モニタリングなしの通常管理を行う対照群に1:1でランダムに割り付けた。

 介入群では、術中から術後4時間まで心拍出量モニタリングに基づく輸液および低用量強心薬の静脈内投与を施行した。心拍出量モニタリングはClearSight(非侵襲的センサー)またはFloTrac(侵襲的動脈圧センサー)を用いて行い、強心薬はドブタミン(2.5μg/kg/分)またはdopexamine(0.5μg/kg/分)を用いた。

 解析の結果、主要評価項目とした術後30日以内の術後感染は介入群の1,247例中289例(23.2%)と対照群の1,247例中283例(22.7%)に発生し、発生率に有意差はなかった〔調整後オッズ比(aOR)1.03、95%CI 0.84~1.25、P=0.81〕。

術後24時間の不整脈増加、30日以内では差なし 

 一方、安全性評価項目とした24時間以内の急性心イベント(不整脈、心筋梗塞、非心臓手術後の心筋損傷、蘇生成功後の心停止、心原性肺水腫)は、対照群の1,247例中21例(1.7%)に対し介入群で1,250例中38例(3.0%)と有意に多かった(aOR 1.82、95%CI 1.06~3.13、P=0.03)。有意差の主な原因は、介入群における不整脈の増加だった(17例 vs. 33例)。

 術後30日以内の急性心イベント(aOR 1.06、95%CI 0.77~1.47、P=0.71)、30日以内の急性腎障害(同1.24、0.77~2.00、P=0.37)、180日以内の死亡(同0.76、0.54~1.07、P=0.12)の発生率に有意差はなかった。

 これらの結果は、手術部位、術式、心拍出量モニタリングのセンサーで層別化したサブグループ解析でも一貫していた。

 以上の結果から、Edwards氏らは「選択的消化器外科手術を受ける高リスク患者において、心拍出量モニタリングに基づく輸液および低用量強心薬静注による循環動態管理法では術後感染の発生率は低下せず、術後24時間以内の急性心イベント、特に頻脈性不整脈の発生率が上昇した。したがって、この管理法のルーチン施行は推奨されない」と結論している。

(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)