小児期や青年期における朝食摂取と自殺行動の関連については複数の研究があるが、成人や高齢者における両者の関連性はあまり報告されていない。中国・Hebei UniversityのYunshu Zhang氏らは、18歳以上の市民における朝食摂取頻度と自殺行動との関連を検討する横断研究を実施。朝食摂取頻度の低さが自殺行動と正相関していたことをFront Public Health(2024; 12: 1410499)に報告した(関連記事「朝食欠食がADHD、うつのリスクに」)。
朝食摂取頻度は自殺念慮・計画・未遂の全てと関連
対象は中国・河北省に住む18歳以上の市民2万1,376例。面接調査により、1週間当たりの朝食摂取頻度および完全な朝食の摂取頻度と、自殺念慮、自殺計画、自殺未遂の関連について評価した。また、朝食摂取頻度以外で自殺行動と関連する因子についても調べた。
全体の平均年齢は50.85歳、女性の割合は54.0%だった。本研究における自殺念慮、自殺計画、自殺未遂の経験率は、それぞれ1.4%、0.3%、0.2%だった。
対象の85.6%が週に6日以上朝食を摂取していた。ロジスティック回帰分析の結果、週6日以上朝食を摂っていた群と比べ、週2~3日の群では自殺念慮〔オッズ比(OR)1.93、P<0.01〕、自殺計画(OR 2.73、P<0.05)、自殺未遂(OR 3.46、P<0.05)と正の相関が認められた。また、週1日以下の朝食摂取と自殺計画(OR 2.34, P<0.05)および自殺未遂(OR 2.89、P<0.05)も正相関していた。
一方、週2~3日の頻度で完全な朝食を摂取していた群は、完全な朝食をまったく摂取していない群と比べ、自殺念慮のリスクが高かったが(OR 2.06、P<0.001)、完全な朝食の摂取頻度と自殺計画、自殺未遂との間に関連は認められなかった。
健康なライフスタイルの一環として影響か
ロジスティック回帰分析において、朝食摂取頻度のほかに自殺行動と強く関連していたのは睡眠の質の低下で、自殺念慮(OR 1.25、P<0.001)、自殺計画(OR 1.18、P<0.001)、自殺未遂(OR 1.17、P<0.001)のいずれとも正相関していた。
本研究における自殺念慮、自殺計画、自殺未遂の経験率は、中国および他国における先行研究結果と比較して低かった。その理由は明らかでないが、Zhang氏らは、近年の中国では自殺率そのものが低下していることを指摘している。
同氏らは、朝食を摂ることは健康なライフスタイルの一環であり、そのことが自殺行動との関連に影響を与えているのではないかと推測している。また、朝食の摂取頻度が低い人に、自殺行動の危険因子である気分障害が多い可能性も指摘している。
完全な朝食を週2~3日摂取していた群で、自殺念慮の経験者が多かったことについて、同氏らは神経性過食症との関連の可能性を示唆しているが、正確な理由は明らかでない。本研究の自殺行動および朝食摂取頻度に関する情報は全て自己申告によるもので想起バイアスが混入した可能性がある。また、完全な朝食の内容について定義や標準化もされていない。
これらの結果と考察を踏まえ、同氏らは「朝食摂取頻度の低さは自殺行動と正の関連を示していた。また、週2~3日完全な朝食を摂取する参加者も自殺念慮のリスクが高いことが明らかになった」と結論。「朝食摂取と自殺行動を関連付けるメカニズムについては今後検討の余地がある」と付言している。
(医学ライター・小路浩史)