心臓移植を受けた患者は、免疫抑制療法の影響により悪性腫瘍のリスクが高まることが知られている。特に皮膚がんの発生率が高く、扁平上皮がん(SCC) や 基底細胞がん(BCC) などの非黒色腫皮膚がん(NMSC)が多くを占めるといわれるが、実態は不明である。中国・Zhejiang Chinese Medical UniversityのYe Yang氏らは、心臓移植後の皮膚がんの発生率と危険因子を明らかにする目的でシステマチックレビューとメタ解析を実施。心臓移植後患者の皮膚がん発生率は16%と高く、特にSCCのリスクが顕著であることが示されたとArch Dermatol Res(2025; 317: 248)に報告した(関連記事「皮膚がん予防のほくろチェック、日本は最下位」「日焼けサロンは皮膚黒色腫に影響するか?」)。
34件のコホート研究を調査
心臓移植後患者における皮膚がんの発生率に関する報告は一貫しておらず、一部の研究では1%未満とされる一方で、最大35.7%に達するとの報告もあり、ばらつきが大きい。また、皮膚がんは死亡率こそ低いものの、臓器移植後の患者にとって大きな経済的負担となる。さらに、糖尿病や免疫抑制の影響と皮膚がんリスクとの関連についても研究間で結果が一致しておらず、その関係性は十分に解明されていない。
こうした背景から、Yang氏らは、心臓移植後患者における皮膚がんの発生率と危険因子を明らかにするためのシステマチックレビューとメタ解析を行った。PubMed、Scopus、Web of Science、Cochrane Libraryなどの8つの主要な医学論文データベースを用いて、心臓移植後の皮膚がんについて検討した研究を検索。最終的に34件のコホート研究をメタ解析の対象とした。
移植後の定期的な皮膚検診が重要
解析の結果、心臓移植患者における皮膚がんの統合発生率は16%(95%CI 14〜19%)であった。SCCの発生率は10%(同8〜12%)、BCCの発生率は8%(同6〜9%)であり、皮膚がんのリスクが特に高いことが示された。地域別に見ると、皮膚がんの発生率は米国(22%)で最も高く、次いで欧州(16%)、アジア(1%)の順であった。
皮膚がんのリスクを高める要因として、年齢の増加〔相対リスク(RR)1.08〕、男性(同1.53)、白人(同10.23)、喫煙歴(同1.26)、日光曝露時間が2,500時間以上(同3.66)、移植前のがん既往歴(同1.61)、免疫抑制薬OKT3の使用(同2.61)が有意に関連していた。一方、糖尿病やサイトメガロウイルス感染の有無と皮膚がんリスクとの関連は認められなかった。
以上から、Yang氏らは「心臓移植後患者における皮膚がんの発生率は16%と高く、特にSCCのリスクが顕著であることが示された。また、年齢、性別、人種、喫煙、日光曝露、免疫抑制薬の使用が重要な危険因子として特定された」と結論。心臓移植後患者に対する定期的な皮膚検診の実施や紫外線防御対策、免疫抑制療法の適正化、禁煙指導などの重要性を強調している。
(編集部・長谷部弥生)