医療・医薬・福祉

スマートウォッチデータから示されるコロナ後遺症の症状変化 呼吸リハビリオンライン指導での効果検証

株式会社Anapana
~リハビリテーション医療DX学会 第2回学術集会にて発表~

ヒラハタクリニック(東京都渋谷区 代表:平畑光一)とのざき鍼灸治療院(千葉県流山市 代表:野崎真治)は、新井田厚司講師(国立大学法人東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野)の協力のもと、コロナ後遺症の患者に対する呼吸リハビリテーションのオンライン指導(呼吸リハビリオンライン指導)の効果の検証研究を行いました。質問紙調査より、コロナ後遺症の特徴である呼吸苦、倦怠感、体の痛みなどの症状が改善する可能性があることがわかりました。また質問紙調査とスマートウォッチデータの相関解析により、不眠と起床時間の関連が示され、スマートウォッチデータを症状変化の客観的指標として利用できる可能性が示されました。今回の研究成果は、株式会社Anapanaの協力のもと、日本リハビリテーション医療デジタルトランスフォーメーション学会 第2回学術集会(2024年07月13日~14日・千葉開催)にて報告しました。今後、株式会社Anapanaでは本研究に基づいて、呼吸リハビリを支援するスマートフォンのアプリ開発を行い、ヒラハタクリニック及び東京大学医科学研究所との共同研究によるその効果の科学的検証を通じて、より多くの方への呼吸リハビリ法の普及を目指します。


【はじめに】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界中で多くの人々に深刻な影響を与えました。特に、感染後も長期間にわたり症状が続く「コロナ後遺症」に苦しむ患者は2024年現在でも増加を続けています。これらの患者は、倦怠感、息切れ、思考力の低下、不眠などの症状に悩まされ、日常生活に大きな支障をきたしています。2023年の厚労省の調査で、感染後にコロナ後遺症になった割合が成人で11.7~23.4%と報告されています1)。
コロナ後遺症では症状や期間により個人差がありますが、その多くは倦怠感(だるさ、疲労感)や息苦しさ、思考力の低下(ブレインフォグ)や不眠などでQOL(生活の質)が低下し、症状が重い場合は家で寝たきりとなり、医療へのアクセスや就労も出来ず、大きな社会問題になっています。
現在、コロナ後遺症に対する効果的な治療法は確立していませんが、先行研究や臨床上の所見から、後遺症状には感染による肺の機能障害や微小血栓などが原因の「組織の酸素不足」が強く関係している可能性が高く、酸素供給量を増やすための呼吸器リハビリテーション法(呼吸リハビリ)が有効と考えられます。従来の自己で行う呼吸リハビリとしては、両手を組み肩関節屈伸運動と深呼吸を行うことで大きな換気量が得られるとされているシルベスター法などが知られていました。しかし重症の患者では実施が難しく、症状が増悪することもありました。また、厚労省の手引きでは椅子に座って行う胸郭可動域拡大訓練、筋力トレーニングなども推奨されていますが、いずれも中程度以上の患者には負荷が強すぎ、実施不可能でした。私たちは上記の問題点を改善し、重症度に併せて無理なく実施が可能な呼吸リハビリ方法を開発し、呼吸リハビリオンライン指導を実施しています。これまでにのべ1000人のコロナ後遺症患者が参加し「呼吸が楽になった」「倦怠感が少なくなった」「活動量が増えた」「よく眠れるようになった」「寝たきりでも自宅でできるので助かる」など私たちの呼吸リハビリ方法を支持する多数の患者の声を得ているものの、その効果の科学的検証はなされていませんでした。そこで本研究では、質問調査紙及びスマートウォッチを活用して呼吸リハビリオンライン指導のコロナ後遺症への効果の立証を試みました。

1) https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001146453.pdf

【方法】
COVID-19感染後6カ月経過しても症状の残存している20人の患者さんを対象者としてガーミン社製スマートウォッチを装着してもらい、週一回のオンライン呼吸リハビリセッションに8回参加してもらいました。

         図1:データ取得のタイミング

図1に示した通り、質問調査紙データを週一回×11回、とスマートウォッチデータを10週間に渡って取得し、リハビリ開始前の最初の二週間を介入前、最後の一週間を介入後として、介入前後で質問調査紙項目とスマートウォッチから計算される心拍及び睡眠パラメータの変化を分析しました。

【結果】
質問調査紙からの結果により、リハビリの効果は患者間でばらつきがあったものの、息苦しさ、倦怠感、体の痛み等については多くの患者において顕著な改善が見られました。(図2)。

         図2:質問紙調査紙からの結果

またスマートウォッチデータを合わせて解析することにより、不眠と起床時間の相関がみいだされ、起床時間が遅くなることによって不眠感がよくなっていることが示唆されました。このことは朝早く目覚めることがなくなったという患者からのコメントとも一致していました。

     図3:スマートウォッチデータからの結果


【まとめと今後の展望】
呼吸リハビリオンライン指導によりコロナ後遺症の特徴である倦怠感や息苦しさ、体の痛みなどの症状が改善する可能性が示されました。今後、株式会社Anapanaでは、呼吸リハビリを支援するスマートフォンのアプリ開発を行い、ヒラハタクリニック、東京大学医科学研究所との共同研究によるその効果の科学的検証を通じて、より多くの方への呼吸リハビリ法の普及を目指します。

【取材依頼・お問い合わせ先】
会社名  :株式会社Anapana
担当   :野崎真治

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