治療・予防

便から炎症の程度を把握 
潰瘍性大腸炎の簡便な検査法

 大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる「潰瘍性大腸炎」。治療の開始や変更の際、炎症の程度を把握したり、治療の効果を評価したりするために大腸内視鏡検査が広く行われているが、患者負担が大きいという問題がある。近年、便に含まれる特定の物質を測定して炎症の程度や治療の効果を調べる検査法が登場し、内視鏡検査の回数を減らせると期待されている。

 ▽負担大きい大腸内視鏡

 潰瘍性大腸炎は、血便、下痢、腹痛などの症状が表れ、良くなったり、悪くなったりを繰り返す慢性の病気だ。国内の推計患者数は約22万人。男性では20~24歳、女性では25~29歳が発症のピークだ。原因は不明で、国の難病に指定されている。

 杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)消化器内科の久松理一教授は「1日に何度もトイレに行きたくなるなど、生活に大きな支障を来します。若年層に多く、就学、就労、結婚、妊娠の時期と重なることもあり、社会的影響が大きい病気です」と話す。

 飲み薬や注射薬などで炎症を抑えることが治療の基本となる。治療の前と一定期間後に、大腸の炎症の程度や改善度合いを知る目的で大腸内視鏡検査が行われる。「治療で炎症が治まり、大腸の粘膜がきれいになっていれば、再燃が少ないと考えられます」(久松教授)。

 とはいえ、大腸内視鏡検査では、事前に下剤と約2リットルの洗腸液を飲み、腸内を空っぽにした上で肛門から管を挿入するため、患者の負担は大きい。

 ▽安全で簡便に検査

 その負担を減らすと期待されるのが、採取した便中のカルプロテクチンを測定する検査だ。カルプロテクチンは、白血球の一つである好中球などが分泌するタンパク質。久松教授は「腸内で炎症が起こると、集まってきた好中球が分泌するカルプロテクチンが便中に漏れ出ます。それを調べれば、大腸粘膜の炎症の程度を把握できます」と説明する。カルプロテクチンの濃度は内視鏡で見た粘膜の炎症の程度と相関しており、安全で簡便に行えるという特徴もある。

 「内視鏡検査の補助として使えば、内視鏡の回数を減らすことができるかもしれません」と久松教授。例えば、治療の効果を評価する時には内視鏡の代わりにカルプロテクチン検査を行う、といった使い方が考えられるという。

 一方、軽症の患者でカルプロテクチンを定期的に測定し、数値が上がってきたら、症状に変化はなくても再燃を疑って内視鏡検査の必要性を検討することも考えられる。

 新たなカルプロテクチン検査薬として、約10分で測定ができる製品が承認され、このほど発売された。久松教授は「診察室で患者と共に検査結果を見ながら、内視鏡検査が必要か、治療の強化が必要かなどの治療方針を相談できる利点があります」と期待感を示す。(メディカルトリビューン=時事)


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