治療・予防

ウイルスや寄生虫に注意―ジビエ料理 
肉の中まで加熱し、生食しない

 シカやイノシシ、キジなど野生鳥獣の肉は、「ジビエ」と呼ばれる。近年、ジビエ料理を専門に扱う飲食店が増えているが、覚えておきたいのは、生肉や加熱不十分な肉を食べたことによって起こる食中毒だ。東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センター(東京都文京区)の関崎勉教授は「十分に加熱するなどして、食の安全を徹底してほしい」と呼び掛ける。

 E型肝炎で死亡例も

 ジビエは、以前は狩猟者など一部で食されてきた珍しい食材だ。最近は、ひと昔前よりも流通量が増え、一般の人にも身近な食材になりつつある。ジビエの広がりは、増え過ぎた野生動物による農作物の被害を防ぐため、国や自治体が野生動物を捕獲し、衛生管理された肉の流通を後押ししていることによるものだ。

 気になるのは安全性だ。「野生動物は、細菌やウイルス、寄生虫といった病原体を保有している可能性が高いと考えられます」と関崎教授は説明する。

 まず警戒すべきは、E型肝炎ウイルスだ。感染すると発熱、悪心(おしん)、腹痛、黄疸(おうだん)などの症状が出て、まれに劇症化することがある。イノシシの内臓を生で食べて重症のE型肝炎を発症し、死亡した例も報告されている。

 ほかにも腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターといった細菌、トリヒナやトキソプラズマといった寄生虫が含まれている可能性がある。

 関崎教授によれば、特に問題となるのは妊娠中の女性だ。免疫力が低下しているため、E型肝炎ウイルスに感染すると劇症化のリスクが高まる。また、トキソプラズマは健康な人では症状が表れないが、妊娠女性が感染すると、死産や胎児の脳障害などを引き起こすことがある。「ジビエによる食中毒は、下痢などにとどまらず、深刻な影響を及ぼす場合があることを知ってほしい」と注意を促す。

 ▽安全な調理法は?
 2018年には安全なジビエの提供を目的に、捕獲した野生のシカやイノシシを処理する衛生環境の整った食肉施設を認定する「国産ジビエ認証制度」もスタートした。

 安全対策が進み、身近になったジビエ。関崎教授は「しっかり加熱調理すれば、野生の食肉でも安全に食べられます。調理の際は、調理器具も含めて他の食材と分け、生肉に触れた包丁やまな板はよく洗浄し、消毒しましょう。肉を焼くときは中心部の温度が75℃で1分間以上加熱するなど、色が変わるまで火を通してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)


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