E型肝炎〔いーがたかんえん〕 家庭の医学

 E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎です。
 感染経路は、開発途上国ではA型肝炎と同様、おもにウイルスを含む糞便で汚染された水などによる水系感染ですが、わが国では汚染された食品や動物の臓器・肉の生食による経口感染が指摘されています。これまでイノシシやブタのレバーの生食、シカ肉の生食などが原因となった事例が報告されています。潜伏期はA型肝炎より長く、平均6週間といわれています。
 臨床症状はA型肝炎と同様で、悪心(おしん)、食欲不振、腹痛などの消化器症状に黄疸(おうだん)、肝機能障害を伴う急性肝炎を起こします。慢性化することはなく、多くの場合、通常発症から1カ月を経て完治しますが、妊婦では劇症化する割合が高く、致死率が20%にも達することがあるともいわれています。
 病原診断は、血液中のウイルス遺伝子もしくは特異的抗体の検出によりおこないます。
 治療として特異的なものはなく、対症療法のみとなります。劇症肝炎に対しては、血漿(けっしょう)交換などによる治療が必要となります。
 一般的な予防としてはA型肝炎と同様に、汚染地域と考えられる地域に旅行する場合に、飲料水、食物に注意し、基本的には加熱したもののみを摂取するように心掛けることです。特にジビエを調理する際には注意が必要です。ワクチンはまだ開発されていません。

【参照】肝臓と胆道の病気:急性肝炎

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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