インタビュー

新型肺炎、初期対応に疑問 
SARS同様の大問題

 ◇インフルとの類似やっかい

 「WHOの分析では全体の想定死亡率は2%だが、若年者の死亡率は0.2%と低く、逆に80歳以上は15%と非常に高い。国内で感染が拡大した場合、高齢者への対策が重用になるが、北海道で20代女性が重篤化して人工呼吸器で治療した例も報道され、若いからといって油断はできない」

 また、初期の症状が一般の風邪やインフルエンザと類似しているため、医療的な対応が後手に回ることも、菅谷センター長は危惧する。国はせきなど風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合に、相談センターなどを介して医療機関を受診するようにとする「目安」をまとめた。

新型肺炎の感染予防を呼び掛けるJリーグの会場

新型肺炎の感染予防を呼び掛けるJリーグの会場

 菅谷センター長は「病院の混雑を防ぐ目的と思われるが、『4日間自宅待機』とする妥当な医学的根拠はないし、患者の不安を考えると不適切な提言と思われる」と言い、「もしCOVID-19であれば、4日間の自宅待機中に重症化の可能性もある。その上、同居している家族、さらに家族が通う会社や学校などで感染を拡大することになる。

 しかも子どもはともかくとして、大人がこのような発熱をすることは普通ないし、インフルエンザだった場合は手遅れになる場合もある」と指摘している。

 ◇今打つべき手段を全て

 医療機関を受診して風邪やインフルエンザであれば治療する。もし原因不明なら肺炎の兆候はないか、必要であれば胸部X線かCT検査で疑い例を早期に発見し、確定診断につなげて、治療、感染防止、患者、国民の不安を解消していくことが求められる。

 また感染拡大を抑制するため、集会やイベントの中止・延期、時差出勤の推奨や一部での移動制限など、できる手は全て打つことも大切だ。

 このために欠かせないのが、診療所などでも活用できる、インフルエンザのような簡易な迅速診断キットの早期開発と有効な抗ウイルス薬の早期導入だ。「季節性インフルエンザとは比べものにならない重要な問題であり、流行期間も長引くことが予想される。今打てる手は全て打つことが必要だ」と菅谷センター長は話す。


用語説明】重症急性呼吸器症候群(SARS)
 2002年11月に中国南部の広東省で最初の患者が報告され、中国以外にも東南アジアや東アジア、カナダなどに拡大した、当時の新型コロナウイルスによる感染症。原因ウイルスは「SARSコロナウイルス(SARSーCoV)。03年を最後にこれまで感染者は報告されていないが、8000人以上の患者と774人の死者が出たとされる。(喜多宗太郎・鈴木豊)

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