研究・論文

期待高まる「アビガン」 
新型コロナ治療薬

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数が増加し続けている。タレントの志村けんさんが発症後短い期間で死去した出来事は、社会にショックを与えた。
 感染の制圧に不可欠なワクチンと治療薬の開発・実用化には時間がかかるため、HIVやぜんそくの治療薬など既存の薬でウイルスに有効な薬を探す動きが加速している。特に、有効性を示す論文が報告された新型インフルエンザ治療薬「ファビピラビル(商品名『アビガン』)」については、安倍晋三首相が3月28日の記者会見で言及、「新型コロナウイルスの治療薬として正式承認するにあたって必要となるプロセスを開始する」と表明するなど期待が高まっている。

新型コロナウイルスの治療薬としても期待されるアビガン=富士フイルム提供

 ◇抗HIV薬と差

 海外の専門科学雑誌に掲載された論文によると、中国で発症7日以内の入院患者35人に対して14日間、アビガンと同じ主成分の薬を投与し、同じ条件で抗HIV薬を投与した45人と効果を比較した。

 その結果、上気道部からウイルスが検出されなくなるまでの期間はアビガンが平均4日だったのに対し、抗HIV薬では平均11日と統計学上認められるだけの差が出た。

 さらに、胸部CT画像での症状の改善が認められたのは、アビガンが投与された患者の91.4%に対して抗HIV剤が投与された患者では62.2%にとどまった。副作用が認められた患者もアビガンの方が少なかったという。

 ◇治療で積極的使用を

 この論文に注目した神奈川県警友会けいゆう病院(横浜市)感染制御センター長で、世界保健機関(WHO)の重症インフルエンザガイドライン委員でもある菅谷憲夫医師は「研究として見れば、比較対象の設定や試験の手順について多少の問題はある。しかし、治療上の有効性が示された点に大きな意味を認めたい」と話す。

記者会見でアビガンに言及した安倍晋三首相=28日、首相官邸【時事】

 その上で、「日本で承認された薬で、国内で十分に量も確保できる。現在のように、さらなる感染拡大が危惧されている状態であれば、高齢者や基礎疾患を持つなど重症化しやすい患者を中心に積極的に治療に使いながら、安全性や効果などを確認していくべきだ」と強調する。

 インフルエンザなどウイルス感染症への治療では、できるだけ早期に発見・診断して治療を始めるのが鉄則だ。アビガンについての今回の報告は、重症化した患者ではなく、発病後早期の患者で、抗ウイルス薬本来の使われ方をして効果が認められたことが大きい。しかもインフルエンザ治療薬として承認され、国内で生産されているアビガンは、短時間で幅広い医療機関に供給して治療に用いることが可能だ。

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