治療・予防

計算や書字に問題―ゲルストマン症候群 
日常生活に大きな不便 上本町わたなべクリニック 渡辺章範院長

 左右が分からない、個々の指を指定されても特定できない、暗算や筆算ができない、字を書くことができない―。この四つの症状を特徴とするのがゲルストマン症候群だ。多くは脳卒中の発症後や脳の頭頂葉という場所の損傷後に表れるが、まれに小児にも見られる。上本町わたなべクリニック(大阪市)の渡辺章範院長に聞いた。

時間をかければ症状を克服できる可能性も

時間をかければ症状を克服できる可能性も

 ▽特徴的な4症状

 ゲルストマン症候群は、非常にまれな病気だ。一つの原因で発症するのかについては諸説がある。また、四つの症状の一部しか見られなくても不全型として捉えられている。

 「一つ一つの症状は珍しくありません。健康な人でも、左右を明確に区別できるようになったのは大学生になってからという人もいます。症状が複数表れて初めてこの症候群が疑われます」と渡辺院長。

 小児の場合は、発達性ゲルストマン症候群と呼ばれる。授業の時に字が書けない、計算ができない、左右の違いが分からない、個々の指を識別できないなどの症状で、小学校入学以降に気付くという。

 しかし、文字や計算の習得には個人差があり、自閉症スペクトラムや発達障害ではないことを確認する必要もある。そのため、渡辺院長は「慎重な対応が求められます」と強調する。

 ▽焦らず治療継続

 ゲルストマン症候群の治療では、脳卒中などが原因と考えられる成人の場合、作業療法や言語療法などのリハビリテーションを行う。リハビリが進むに従い、症状の多くは軽快する。小児では、原因がまだ分かっていないため最適な治療法はないが、成人と同じようなリハビリを通じたトレーニングで症状を克服できる可能性は大きいという。

 「社会で生きていくためには、左右を区別する、計算する、文字を書いたり読んだりするといった能力は不可欠です。成人でも小児でも、症状の軽減には大変な努力が必要です。焦らずに、時間をかけてトレーニングを続けることがとても大切になります」と渡辺院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)


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