治療・予防

貧血やコーラ色の尿が特徴
~発作性夜間ヘモグロビン尿症(慶応義塾大学病院 片岡圭亮教授)~

 起床後の尿がコーラ飲料のような茶褐色になり、貧血黄疸(おうだん)などの症状が出る「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」。国が指定する難病だが、治療方法は進歩している。慶応義塾大学病院(東京都新宿区)血液内科の片岡圭亮教授に話を聞いた。

発作性夜間ヘモグロビン尿症に多い症状

発作性夜間ヘモグロビン尿症に多い症状

 ▽遺伝子異常で赤血球が破壊

 PNHは、血液をつくる基となる造血幹細胞の「PIGA」という遺伝子が変異する病気。生まれつきのものではなく、患者層も20~60代と幅広く、男女差もない。

 PIGAが関わるのは、「補体」という抗体の働きを補う免疫機能。病原菌が体に侵入すると補体が活性化して感染を防御するが、普段はその働きをPIGAが合成に関わる「GPIアンカー型タンパク質」という物質が抑えている。しかし、PIGAの遺伝子異常が起こることで制御が利かなくなり、補体が赤血球を破壊してしまう。

 「赤血球が破壊されることを『溶血』と言います。PNHによる溶血は発作的に起こり、夜間睡眠中に出やすいのが特徴です」と片岡教授。溶血によって血液中のヘモグロビンが流れ出て、起床後の尿が茶褐色になる。そのため、医療機関を受診した際や健康診断の血液検査で診断されることが多いという。

 ▽薬の開発でQOLが向上

 PNHの平均生存期間は約32年で、中には自然に治癒するケースもある。溶血発作が起こると、強い貧血による倦怠(けんたい)感や頭痛黄疸などの症状が出る。

 「PNHは、溶血が軽度で日常生活に影響がなければ、専門医の下で経過観察を行います」。中等症以上は薬物治療を行う。

 以前の治療はステロイド、輸血などに限られていたが、現在は2週間に1回、あるいは8週間に1回の点滴治療で溶血を防ぐことが可能だ。治療は生涯必要だが、溶血発作を防ぐことができるようになったため、患者の生活の質(QOL)は大幅に向上した。

 ただし注意は必要だ。「この薬には『髄膜炎菌感染』という副作用があるため、髄膜炎菌ワクチン接種を受ける必要があります。感染が疑われる発熱頭痛などの症状が出たときに備え、PNHの診療経験が豊富な医療機関、専門医の治療を受け、緊急時の対応を共有しておくことが大切です」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス