インタビュー

治療難しい摂食障害、長引くコロナも影響
~全国規模の相談電話、気軽に利用呼び掛ける~ 河合啓介・国立国際医療研究センター国府台病院心療内科診療科長


 ──治療に「地方格差」が生まれているという指摘もあります。

 支援拠点病院から遠い自治体の患者さんは自宅近くの専門医が不明なこともあります。支援拠点病院から遠く離れた地域の患者さんの置かれた状況は深刻です。家族と本人はどこに行けばいいか分からず、地域によっては支援拠点病院自体、情報に乏しいこともあり、本当に困っています。それに、病院にかかってはいるけど、治療が進んでいないという患者さんもいらっしゃるかもしれません。病院数が少ないので、一つの病院の先生と関係が悪くなると、次の行き場が見つかりにくいです。首都圏のように選択肢がないのです。

河合啓介診療科長

河合啓介診療科長

 ──改めて摂食障害への今後の対応の重要点は。

 医師との治療関係の構築に時間がかかる疾患ですが、まずは病院にかかりながら治療が中断してしまっている患者さんや、未受診の患者さんを減らすことが目標です。われわれ拠点病院が、こうした患者さんの自宅近くでの専門医の養成に協力していくことも重要でしょう。

 現代のような他人と自分とを比べざるを得ない競争社会の中で、自信を失いかけている人がどうにかして生き延びようと模索した結果であるとするなら、誰もがかかる可能性のある疾患といえます。単なる「わがままな病気」「自己コントロールできない人」という誤ったレッテルの改善も進めていく必要があると思います。入院のキャパシティーに限界があり、治療に多大な時間を取られる点も問題で、徐々に解消しなくてはいけないと思います。

 ──患者さんへのメッセージがあればお願いします。

 一人では治せない疾患です。まずは来院より敷居の低い相談ほっとラインに相談してほしいと思います。孤立している人も多いと思いますが、相談するだけでもかなり気持ちが楽になります。早期から治療すればよくなる人も多い。虐待など皆さんの抱えているバックグラウンドも多様で、心に深い傷を負った方もいます。すぐには解決できないかもしれないけれど、一度、話のできる範囲で結構ですので教えていただいて、一緒に解決の糸口を探っていきたいと思っています。
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 ○摂食障害
 「神経性やせ症(拒食症)」と「神経性過食症(過食症)」に大別される。拒食症患者は、体重やそれがもたらす自己評価に強いこだわりがあり、孤独や疎外感などを「痩せ」という理想の追求によって満たす。また、食べることを極端に減らし、周囲から見れば痩せ過ぎているのに、低体重に執着する。一方、過食症はむちゃ食いの結果、それの代償行為として嘔吐(おうと)や下剤の乱用を伴うことがある。臨床では、身体科と精神科、心療内科が連携して心身両面の治療を行う。拒食症と過食症とは表裏一体で相互に移行することも多いが、いずれも「食」をコントロールできなくなる精神疾患と捉えられる。過度なダイエットから摂食障害へと進行することが多い。拒食症では極度の栄養不足に起因する衰弱死、不整脈感染症などが報告され、自殺も含めた死亡率は5〜6%で、精神疾患の中では高い。男女比は1対20と、圧倒的に女性が多い。
 ○ほっとライン
 「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」(047─710─8869、火曜、木曜、金曜の午前9時から午後3時)
 ※この活動は、国立精神・神経医療研究センターに設置されている摂食障害全国支援センターにおける「摂食障害治療支援センター設置運営事業」の一環。(時事通信社「厚生福祉」2022年08月16日号より転載)

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