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がんゲノム医療のさらなる拡大へ向けた一歩~コンピューター解析で意義不明変異のなかに治療標的となる新たな遺伝子変異を発見~ 慈恵大学 国立がん研究センター 京都大学 筑波大学 東北大学 東京工業大学


研究支援

 本研究は、日本医薬研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業(JP21ck0106522 and JP22ck0106721)、次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)(JP21cm0106701)、 JP21ck0106522、JP22ck0106721)、国立がん研究センター研究開発費 (2021-A-10)、AMED橋渡し研究プログラム(国立がん研究センターシーズA)(22ym0126804j0001/21-A-08)、文部科学省科学研究費助成事業(20H00545、JP21K06510)、文部科学省 スーパーコンピューター「富岳」成果創出加速プログラム「プレシジョンメディスンを加速する創薬ビッグデータ統合システムの推進」、財団法人計算科学振興財団(FOCUS)スーパーコンピューティングセンター、AMED 生命科学・創薬研究支援基盤事業[革新的創薬・生命科学研究支援基盤(BINDS)](JP21am0101112(支援番号1198))、武田科学振興財団、内藤記念財団、上原記念財団の支援を受け行われました。また、分子動力学シミュレーションの一部は、理化学研究所計算科学研究センター HPCIシステム研究プロジェクト(プロジェクトID:hp200129、hp210172)で提供するスーパーコンピューター「富岳」の計算資源を利用して行われました。

発表雑誌
雑誌名
Cancer Research(オンライン版)
論文タイトル
Novel calcium-binding ablating mutations induce constitutive RET activity and drive tumorigenesis
著者
Junya Tabata, Takashi Nakaoku* (co-first), Mitsugu Araki, Ryunosuke Yoshino, Shinji Kohsaka, Ayaka Otsuka, Masachika Ikegami, Ayako Ui, Shin-ichiro Kanno, Keiko Miyoshi, Shigeyuki Matsumoto, Yukari Sagae, Akira Yasui, Masakazu Sekijima, Hiroyuki Mano, Yasushi Okuno, Aikou Okamoto, Takashi Kohno* (*corresponding authors)
掲載日
2022年9月27日(日本時間9月27日午後11時)
DOI
10.1158/0008-5472.CAN-22-0834

発表者
国立がん研究センター研究所 
ゲノム生物学研究分野 中奥 敬史、田畑 潤哉、大塚 綾香、三吉 敬子、河野 隆志
細胞情報学分野 高阪 真路、池上 政周、間野 博行

国立がん研究センター 先端医療開発センター
ゲノムTR分野 河野 隆志

東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座
田畑 潤哉、岡本 愛光

京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 ビッグデータ医科学分野
荒木 望嗣、松本 篤幸、寒河江 由香里、奥野 恭史

東北大学 加齢医学研究所
宇井 彩子、菅野 新一郎、安井 明

筑波大学 医学医療系
吉野 龍ノ介

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系
関嶋 政和

用語解説
(注1) がんゲノム医療
 がん細胞のゲノムを調べて、遺伝子の変化をもとに患者さん一人ひとりのがんの性質を知り、適切な治療法を選択していく治療法。数十から数百個の遺伝子の異常を一度に調べるがん遺伝子パネル検査が全国230カ所のがんゲノム医療中核拠点・拠点・連携病院で行われるようになり、日本のがんゲノム医療が本格的に開始されています。

がんゲノム医療とがん遺伝子検査パネル がんゲノム医療とは(がんゲノム情報管理センター)
https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/knowledge/cancer_genomic_medicine/get_tested.html

(注2) 意義不明変異:VUS (Variants of Unknown Significance)
 がんの発症にかかわる機能的な変異かどうか判断できるだけの十分な情報がない変異を表す。多くの患者さんのがんで見つかるにもかかわらず、治療薬の選択につながらないため、がんゲノム医療の大きな問題となっている。

(注3) RET遺伝子
 変異や融合などの変化によりがんを起こすがん遺伝子の一つで、タンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)をコードしている。RET遺伝子の融合を持つ肺がん、RET遺伝子の変異・融合を持つ甲状腺がんに対しては、RET阻害薬が治療薬として保険診療で用いられている。

プレスリリース2012年2月13日「新しい肺がん治療標的遺伝子の発見」(国立がん研究センター)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2012/20120213.pdf

(注4) がんゲノムデータベース
 さまざまながんで見つけられる遺伝子変異を集約したデータベース。本研究では、米国癌学会が運営するProject GENIEデータベースに搭載される約7万個の遺伝子変異を研究に用いた。日本の保険診療で用いられる遺伝子パネルの変異データは、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)が運営するデータベースに集約され、研究への利活用が開始されている。

C-CAT登録状況:  https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/registration_status/
C-CAT利活用状況: https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/system/provided/

(注5) 分子動力学シミュレーション
 分子の振る舞いを原子レベルで予測する手法であり、スーパーコンピューターの発達により、高精度な予測が可能となっている。今回の研究のように遺伝子変異の影響を予測したり、変異タンパク質に結合した薬剤の安定性をシミュレーションすることによって、薬剤の効き方を推定することができる。

京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻ビッグデータ医科学分野
http://clinfo.med.kyoto-u.ac.jp/

プレスリリース2012 年2月13日「RET融合遺伝子上に生じるアロステリック効果を持つ二次変異」(国立がん研究センター)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0214/index.html

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