治療・予防

スポーツに伴う心身不調
~オーバートレーニング症候群(すなおクリニック 矢野郁明医師)~

 長期にわたるトレーニングの結果、慢性疲労や運動機能の低下などの身体症状、あるいは集中力の低下や不眠、抑うつ気分などの精神症状が表れたら、オーバートレーニング症候群の可能性がある。

 アスリートのメンタルケアに詳しい、すなおクリニック(さいたま市)の矢野郁明医師(千葉大学精神神経科)は、スポーツドクターのいる医療機関への受診を勧める。

オーバートレーニング症候群

オーバートレーニング症候群

 ◇多彩な症状

 オーバートレーニング症候群は、スポーツに伴う慢性疲労や競技パフォーマンスの低下が2~3カ月以上続く状態をいう。過剰なトレーニングに対して休養と回復が不十分なため、強い疲労感、息切れ動悸(どうき)下痢などの身体症状や、不眠、抑うつ気分、意欲低下、集中力低下などの精神症状が表れる。

 矢野医師によると、常に記録達成や勝敗の重圧の中でハードトレーニングを繰り返すトップアスリートに多く見られる傾向があるが、スポーツ競技を行う中高生でもなり得るという。

 原因は多様であり、はっきりとは分かっていない。「疲れが取れない、眠れない、パフォーマンスの低下が続いている、いつもと同じトレーニングをしているのに息切れがするなどの症状があれば、スポーツドクターのいる内科、整形外科、精神科での受診を。似た症状があるぜんそく貧血甲状腺機能低下症などの有無を調べる目的もあります」

 治療は、まず休養が最優先される。症状の経過を見ながら、ウオーキングなどの軽い運動からトレーニングを再開する。気分の落ち込み、意欲低下といった精神症状が強い場合は、抗うつ薬などが有効なケースも多いという。

 ◇定期的にチェックを

 矢野医師は「日ごろからトレーニングに見合った栄養と睡眠をしっかり取ることが重要です。選手が不調を感じたら気軽に相談できるような環境を、周囲が整えておく必要があります」と強調する。医療スタッフが、定期的に選手のストレスチェックを行うこともオーバートレーニング症候群の予防や早期発見に有効だ。

 「アスリートを支えるスタッフや家族は、選手が一人で悩まないように、選手の声に耳を傾け、一緒にオーバートレーニング症候群と向き合うようにすることが大切です」

 受診先については、日本スポーツ精神医学会や日本スポーツ協会のホームページから検索できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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