治療・予防

発作防ぎ、QOL改善目指す
~片頭痛治療(富永病院 団野大介・頭痛センター副センター長)~

 日本人の約8.4%が罹患(りかん)しているといわれる片頭痛頭痛以外にも吐き気、光・臭い・音に対する過敏反応などさまざまな症状を伴い、日常生活に支障を来すことも。富永病院(大阪市浪速区)頭痛センターの団野大介副センター長は「患者さんは頭痛が無いときも常に発作の不安を抱えています。その悩みは周囲が考える以上に深刻でつらいものです」と指摘する。

生活の質が低下

生活の質が低下

 頭痛の予防も可能に

 片頭痛は発作時に痛みで動けなくなり寝込むなど、日常生活への支障が大きい病気だ。ストレスや睡眠不足、寝過ぎ、月経、天候などが誘因となって発作が起こる。主な症状は頭痛と思われがちだが、頭痛が無いときも体がだるい、めまい、首から上が重いように感じる、不安感といった不定愁訴が多岐にわたって表れる。

 発作が無くても日常生活に不安を抱える患者は多いが「常日ごろから不調が当たり前になり過ぎて、片頭痛による支障だと気付かない人もいます」。

 片頭痛では長らく、頭痛が生じた際に薬で痛みを抑える治療が中心だった。現在は、発作を予防し減らす薬の開発により、頭痛そのものを防ぐ治療法ができた。特に2021年に保険適用となった皮下注射タイプの薬(CGRP関連抗体薬)は、「高い予防効果と副作用の少なさが特徴で、生活の質(QOL)の改善も報告されています。慣れれば自宅で自己注射できる手軽さも利点です」。

 ◇支障を医師に伝えて

 CGRP関連抗体薬によって、片頭痛の治療は変わった。一方、片頭痛発作が起こってから市販の鎮痛薬で対処し、QOLが低いままの人は多い。その理由には、医師と患者のコミュニケーション不足もあるという。「痛い日だけが片頭痛ではありません。痛みが無い日の支障を医師に伝えることが新しい治療につながる第一歩です」

 片頭痛発作が月に4日以上あり、従来の片頭痛発症抑制薬で効果が得られず、生活に支障を来していればCGRP関連抗体薬の適応対象となる。「市販の鎮痛薬を飲み過ぎると、頭痛の悪化につながります。効かないから量を増やすといった悪循環に陥るリスクもあるので、頭痛にお悩みの方は我慢せず、日本頭痛学会の専門医がいる医療機関になるべく早く相談しましょう」と団野副センター長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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