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疲れを感じたらタウリン
~長寿にも寄与か~

「カキは高タンパク・低脂質で健康にもいい食材」とShieさん

「カキは高タンパク・低脂質で健康にもいい食材」とShieさん

 ◇カキ鍋で摂取

 おいしくタウリンを取る料理を、管理栄養士のShieさんに教えてもらった。「タウリンは水溶性のため、含有している食材を煮込めばスープに溶け出る。汁ごと食べられるカキのキムチ鍋は、寒い季節に体を温めてくれてお薦め」とShieさん。

 塩水で洗ったカキ、豚バラ肉、キムチ、ささがきしたゴボウと調味料を鍋に入れ、ごま油で炒める。水を入れて豆腐、ニラも加え、ふたをして加熱する。沸騰したら弱火にし、5~10分ほど煮込む。全ての具材に火が通ったら、卵を割り入れて完成だ。

 カキの柔らかい食感を残したければ加熱時間を短くする。カキの風味を十分に味わえる汁にしたい場合はじっくり煮よう。「カキにはタウリンのほか、タンパク質や鉄、亜鉛も含まれていて栄養価が高い」とShieさん。ニラに含まれるビタミンCは、日本人に不足しがちな鉄の吸収を良くする。

 加熱用カキを選ぶのがポイントで、「生食用のカキは浄化処理がされていることが多い。加熱用は餌が豊富な海域で育ったものが選ばれるため、サイズが大きくうまみもある傾向があるとされる」(Shieさん)。傷みやすいため、新鮮なうちに食べ切った方がいいが、保存するときは冷凍庫へ。Shieさんは「夏場はお酢とあえたマリネでさっぱりと仕上げる、体調が悪いときはミルク煮で優しい味に、とアレンジして日常に取り入れられればいい。鍋料理はいろいろな食材をバランス良く食べることができる。鍋の要素を参考にして、普段も料理してほしい」とアドバイスする。

ネコは他の哺乳類と違い、体内でタウリンを合成できない。タウリンを与えなかったネコは、目の網膜に障害が現れたり、拡張型心筋症などを発症したりすることが分かっている

ネコは他の哺乳類と違い、体内でタウリンを合成できない。タウリンを与えなかったネコは、目の網膜に障害が現れたり、拡張型心筋症などを発症したりすることが分かっている

 ◇動物実験で寿命を左右

 最新の研究では、タウリンが長寿に結び付いていることが分かってきた。米コロンビア大学は2023年、マウスを使った動物実験の結果を発表した。それによると、タウリンを毎日摂取させると寿命が延び、人為的に欠乏させると体調が悪化した。血中濃度が高い個体は長寿、低い個体は短命の傾向があったという。

 久住医師は「もともと、加齢とともに体内のタウリン量が減少することや、長寿の人の血中にはタウリンが多く含まれていることは知られていた。ただ、遺伝的な要因も考えられ、タウリンが長生きの原因と断定できていなかった。今回の報告で明確になった」と解説する。

 最近は老化抑制効果が期待される物質として、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)が耳目を集めている。NMNを摂取すると、体内でNADという、長寿や老化に関連する遺伝子を活性化させる酵素に変わる。年を取るとNADは減少し、それが老化の原因と考えられているため、NADを増やすNMNが話題になっているのだ。

 食材やサプリメントが寿命に与える影響を検証することは難しく、結果が出るまで数十年待たなければならない。だが、世の中は「良さそうだ」という流説だけで動きやすい。NMNに関しては、まさにそんな状況にあると言える。

 久住医師は「タウリンについても同様で、人体でどんな働き・役割をしているのかは研究中だが、摂取による害はないと報告されている。余剰は尿として排出されるだけであることからも、タウリンが含まれた食材を積極的に取ってもよいはずだ」と呼び掛けた。(柴崎裕加)

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