疲れを感じたらタウリン
~長寿にも寄与か~
年末はクリスマスパーティーや忘年会、年が明けたらお正月に新年会と、この時期は会食や飲酒の機会が増えがち。おなかは疲れ気味で寝不足にもなりやすいが、仕事は待ってくれない―。早めに体を回復させたい、こんな時にお薦めの成分がタウリンだ。最新の研究では、長寿との関連性も報告されている。タウリンを有効活用するにはどうしたらいいか。専門家に話を聞いた。
魚介類に多く含まれているタウリン。水溶性なので、汁ごと取れるスープなどがいい。冬場はこんな鍋料理がお薦め
◇細胞活性化で疲労回復
栄養ドリンクやサプリメントの成分などでよく見掛けるタウリンはアミノ酸の一種。人の体では脳、心臓、肝臓、筋肉、眼球などに存在し、総重量は体重の約0.1%相当という。体内で合成されるが、食事で必要量を摂取していると言われている。イカやタコといった魚介類、特に貝類のカキ、サザエなどに多く含まれている。
体内での働きについて、ナビタスクリニック立川(東京)の内科医、久住英二氏は「多くの重要な役割を果たしているが、疲労回復効果は特に注目」と話す。
細胞の中のミトコンドリアはブドウ糖を使って、活動するために必要なエネルギーを生み出す。タウリンは細胞の中で、このミトコンドリアの働きを高め、細胞が活動するエネルギーが十分に供給されるようにしているという。久住医師は「タウリンが持つ細胞を活性化させるという特長は、疲労の回復に有効な手段と言っていい」と説く。
「生き物にとって、タウリンはさまざまな臓器の機能を適正に発揮させる上で重要な成分」と話す久住医師
◇免疫にも関与
免疫を活発化する仕組みも示唆されている。
体内には自然免疫と獲得免疫という二つの免疫機構がある。自然免疫はウイルス、花粉、ほこりなど異物の侵入に対し最初に働く免疫反応を指す。獲得免疫とは、自然免疫細胞が記憶した「ある異物への対処法」を学習し、再びその異物が侵入した際に最適な攻撃をすることを言う。タウリンには自然免疫の殺菌・分解作用や獲得免疫の活性化・抗体産生の促進、細胞の増殖・機能向上などの効果が認められている。
また、A型インフルエンザ感染者や、コロナウイルス感染者の血中タウリン濃度を調べると、いずれも感染前と比べ減少していたという結果が出ている。「タウリンがウイルスとの戦いで消費されたと推測される」(久住医師)。
過剰な免疫反応を抑える調節作用もあると考えられており、久住医師は「風邪の引き始めが自覚されたときに、意識的にタウリンを取るのは望ましい」としている。
軽いランニングなど、有酸素運動が血中タウリン濃度を高めるのに有効だということも分かっている。「早歩きほどの速度でも効果がある。無理のない範囲で」と久住医師
◇飲み過ぎたら…
アルコールは肝臓で解毒・分解されるが、ここでもタウリンが消費される。タウリンはアルコール分解に必要な酵素の手助けをし、分解速度を上げ、肝臓の負担を軽減する。消費した量は補充する必要がある。久住医師は「タウリンは1日の摂取量について定められていない。過剰摂取により何らかの害が発生したこともない。取り過ぎを気にせず、疲れが気になるときは積極的に取り入れてほしい」と話す。
ただ、安易に栄養ドリンクなどを飲むことには注意が必要だ。「栄養ドリンクにはタウリンの他に糖分やカフェインが含まれる。他の成分が過剰になる可能性があるため、飲むのはどうしてもというときだけに。普段の食生活で取ってほしい」と久住医師。献立の内容を、魚介中心で考えてみるのがよさそうだ。
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(2024/01/19 05:00)