治療・予防

早産増加、子どもの運動機能に影響
~気候変動による健康被害(東京医科歯科大学 藤原武男教授)~

 年々深刻化する気候変動。その影響は、早産の増加や、子どもの運動機能・言語・社会性の発達遅れなどに及ぶリスクがある。気候変動と子どもの健康被害との関係について、東京医科歯科大学(東京都文京区)国際健康推進医学分野の藤原武男教授に聞いた。

子どもは熱中症になりやすい

子どもは熱中症になりやすい

 ◇心身の発達に影響

 近年の猛暑は、熱中症や脱水症など直接的な健康被害を受けやすい。「基礎代謝が未発達で、急激な気候の変化に体が対応し切れない子どもは、大人以上に影響が大きい。大人より身長が低い子どもは地面からの反射熱も受けやすい上、発汗機能が未発達なので、猛暑による熱中症のリスクが高まります」

 早産リスク増加

 藤原教授ら東京医科歯科大の研究グループは2011~2020年に生まれた新生児約190万人について、妊娠期間と気象庁公表の気温との関係を調査。その結果、妊娠中に猛暑や極寒など極端な気候にさらされると、赤ちゃんが早く生まれやすくなることが分かった。

 妊娠期間は一般的に40週とされ、37週未満の出産が早産とされる。研究では、沖縄を除く46都道府県の年間平均気温16度を比較基準とした。その結果、出産数週間前の1日の平均気温が低いほど、早産リスクが高い傾向が出た。平均気温が0.8度の場合、早産リスクは基準より15%高かった。また、気温が高いほど早産リスクも上がり、平均気温が30.2度では8%上昇した。

 ぜんそくの悪化も

 猛暑では外遊びの機会も損なわれる。「子どもは外遊びから多くのことを学びますが、その機会が減ると、運動機能やコミュニケーション能力の発達に少なからず影響が出ます」

 日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン」によると、気温や気圧の変化や雷雨、黄砂などはぜんそくの悪化につながる。「温暖化に伴い、症状を引き起こす要因の一つであるアレルゲンの種類が増える可能性もあります」

 一方で、気候変動が子どもの健康を損なうという認識は一般的に低い。藤原教授は「気候変動の影響は既に起きており、将来の状況は想像以上に深刻になり得ることをぜひ知ってほしい」と語る。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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