慢性化する前に対策を
~食事と運動―慢性便秘症(鳥居内科クリニック 鳥居明院長)~
便秘は不快であるだけでなく、心筋梗塞や慢性腎臓病などさまざまな疾病リスクも高める。日本消化管学会は2023年、診療ガイドラインを6年ぶりに改訂し、長期生命予後(病気や治療などの見通し)にも影響を及ぼす健康問題と定義した。ガイドライン改訂の評価委員を務めた鳥居内科クリニック(東京都世田谷区)の鳥居明院長は便秘改善の基本に食事と運動を挙げる。

腸マッサージ
◇1日3食とウオーキングを
新ガイドラインでは、長引く便秘で生活に支障を来し、体にもさまざまな影響が生じる状態が3カ月以上続くことを慢性便秘症と定義している。慢性便秘には便が硬く、強くいきまないと便が出ない、残便感がある「排便困難型」と、排便が週3回未満など「排便回数減少型」がある。
「医療機関では1カ月以上症状が続くと、慢性便秘症として対処します。受診の目安は『快適に自力で排便できるか』で、温水洗浄便座の刺激で排便する習慣がある人は注意が必要です」
改善するには、腸のぜん動運動を促すために1日3食、特に朝食をしっかり取り、今よりプラス約10分のウオーキングをするとよい。
近年注目されているのが、穀類、果物、豆、根菜、海藻などに多く含まれる発酵性食物繊維だ。「発酵性食物繊維入りのシリアルなどは、朝食に取り入れやすいのでお勧めです。油を制限し過ぎると便秘になりやすいため、バランスの良い食事を心掛けましょう」
◇腸マッサージも有効
季節性の便秘にも注意したい。「冬は寒さで交感神経が優位になり、腸の働きが悪くなります。腸マッサージや体操を取り入れましょう」
マッサージは、腹に「の」の字を描くように、両手を重ねてゆっくりと動かす。腸の曲がり角の部位は、便やガスがたまりやすいため入念に行う。便がたまる左下腹部のS状結腸付近も効果的だ。
体をひねる運動も効果がある。「風呂上がりのリラックス時に、あおむけに寝て、膝を立て左右に倒して腰を回す運動を行うと、腸の運動を促します」
それでも解消しない場合は医療機関へ。「慢性便秘症はその人に合う薬の種類の選択と量の調節が重要。薬が効き過ぎると下痢になるので、消化器内科の中でも機能性消化管障害に対応できる専門医を受診するとよいでしょう」と鳥居院長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/28 05:00)
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