災害時、生還からの突然死
クラッシュ症候群とは
地震で倒壊した家屋のがれきなどに長時間手足を挟まれていた人が、無事に救出された後、突然亡くなるケースがある。「クラッシュ症候群」あるいは「挫滅症候群」と呼ばれ、素早い救出と治療が生死を分ける。川崎医科大学(岡山県倉敷市)の小浜啓次名誉教授にその実態を聞いた。
◇壊死から臓器不全に
クラッシュ症候群は手足、特に下肢の辺りが家具や柱、がれきなどの下敷きになり、長時間圧迫された後に、その圧迫から解放されて起こる。圧迫された部分の血流が止まって筋肉が壊死(えし)すると、カリウムやミオグロビンなど毒性の高い物質が発生し、壊死した部位に蓄積される。
圧迫から解放され、血流が回復すると、このカリウムやミオグロビンなどが血流に乗って全身を巡り、心臓や腎臓に機能不全を引き起こす。特に心臓は、血中のカリウムが高濃度になることで心停止を起こす。腎臓も、ミオグロビンにより腎障害や腎不全を来す。腎不全により尿が出なくなると、さらに血中のカリウム濃度が上昇し、心停止のリスクが高まる。
「軽症に見えても2時間以上挟まれていた場合は、救出後2時間以内に心不全を防ぐ治療を開始しなければ命に関わります。圧迫が広範囲で非常に強ければ短時間でも心停止に至ります」と小浜名誉教授は警鐘を鳴らす。
(2018/05/04 17:07)