児童生徒の糖尿病に理解を
教職員向けに「教室」
発病前の予備軍までを含めれば2000万人以上と推計され、大きな問題になっているのが糖尿病だ。幼少期に糖尿病と診断された子ども約1万人前後に上るという試算もある。このため、小中学校など教育現場でも、患者である児童生徒への支援体制の整備と、糖尿病ではない周囲の児童生徒たちに病気への理解を深めてもらうための取り組みが求められている。
患者や専門医、ナースなどメディカルスタッフが参加している日本糖尿病協会(東京都千代田区)は、製薬会社のサノフィ(同新宿区)の協力を得て、各地の小中学校に糖尿病の専門医や糖尿病患者を派遣し、教職員を対象に糖尿病患者が必要とする支援や抱える問題などを説明する「小・中学校教職員向け訪問プログラムKiDS Project」に取り組んでいる。
◇学校側の過剰な警戒?
「1型糖尿病=用語説明①=の小児患者を集めたサマーキャンプの際に、就学・就園を控えた児童の保護者を対象にアンケート調査を実施した。『困難があった』との回答が16%あった」。同協会の堀田裕子事務局長はこう指摘話す。
具体的には「授業中に、子どもが『低血糖=用語説明②=なので保健室に行きたい』と教員に訴えたところ、『我慢してほしい』と言われた」「入学前に糖尿病であることを伝えたら、(低血糖を起こす危険があるとして)体育の授業やマラソン大会などに保護者の立ち会いを求められ、『それは難しい』と断ると、他の小学校を勧められた」―などの声があったという。「担当の教員だけでなく、学校全体に広がる糖尿病への理解不足や過剰な警戒がある」と堀田事務局長は分析する。
同協会は学校外での講習会を企画したこともあったが、多忙な養護教諭や教職員の参加がなかなか見込めなかった。このため、サノフィからの支援を受けて学校側の負担なしに、地域で活躍する糖尿病の専門医と協会による糖尿病啓発活動への参加経験のある比較的若い患者を派遣することにした。患者の実情や必要な支援などを解説する一方、教育現場からの疑問や不安に応えることで相互理解を深めたい、というのが同教室の狙いだ。
同協会理事として2017年9月、都内の私立中学校で先行的に開催した同教室で講師を務めた東京女子医科大学東医療センター(同荒川区)の内潟安子病院長は「教師は基本的に医療的な問題を学ばなくても教壇に立たなければならない。よって、『糖尿病』と聞いただけで身構えてしまう。私たち専門医の仕事は、先生方の不安を取り除き、『ちょっとした目配りをしてもらえれば大丈夫ですよ』というメッセージを伝えることだ」と、自らの体験を振り返りながら語る。
(2018/05/27 16:00)