厚生労働省は昨日(4月8日)付で医薬局医薬安全対策課長通知(医薬安発0408第1号)を発出し、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示。下垂体後葉ホルモンのデスモプレシン酢酸塩水和物の注射剤(商品名デスモプレシン静注4μg「フェリング」)では「重大な副作用」に「アナフィラキシー」を新設、抗アルドステロン薬のエンザルタミド(イクスタンジ)と抗ウイルス薬のニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパック)については併用禁忌とするよう求めている。また、ミトコンドリア機能改善薬のイメグリミン塩酸塩(ツイミーグ)は「中等度または重度の腎機能障害のある患者への投与は推奨されない」という記載を削除し、非推奨の範囲を限定的にするなどの改訂を指示している。(関連記事「GLP-1RA、免疫CP阻害薬などに重大な副作用追記」)
デスモプレシン:因果関係否定できないアナフィラキシーが海外で5例
デスモプレシンについては、アナフィラキシー関連症例を評価したところ、国内症例は認められなかったものの、海外症例が13例集積され、うち薬剤との因果関係が否定できない症例が5例に上った(死亡例なし)。専門委員の意見も聴取した結果、使用上の注意の「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を新設することが適切と判断された。
エンザルタミド、ニルマトレルビル・リトナビル:併用で抗ウイルス作用の消失や耐性出現の恐れ
エンザルタミドとニルマトレルビル・リトナビルについては、両薬を併用した際の薬物動態学的な影響を評価した。その結果、併用によりニルマトレルビルおよびリトナビルの血中濃度が低下し、抗ウイルス作用の消失や耐性出現の恐れがあることが示された。両薬の併用を禁忌とすることの医療現場への影響について、関連学会に意見を聴取したところ、特段の問題はないことが確認された。
以上を踏まえ、エンザルタミドの「禁忌」の項に「次の薬剤を投与中の患者:ニルマトレルビル・リトナビル」を、「相互作用」の「併用禁忌」の項には「ニルマトレルビル・リトナビル」を追記。同様にニルマトレルビル・リトナビルは、それぞれ「次の薬剤を投与中の患者:エンザルタミド」、「エンザルタミド」を追記することが適切と判断された。
イメグリミン:製造販売後臨床試験の結果を踏まえて改訂
イメグリミンについては、住友ファーマが腎機能障害を伴う日本人2型糖尿病患者60例〔20歳以上、推算糸球体濾過量(eGFR)45mL/分/1.73m2未満(以下、eGFRの単位は省略)、HbA1c10.0%未満〕を対象に行った第Ⅳ相多施設共同非盲検非対照製造販売後臨床試験の結果について評価した。
その結果、①「効能または効果に関する注意」の項に記載されている、中等度または重度の腎機能障害患者への投与は推奨されない旨の記載を削除する、②「用法および用量に関連する注意」の項を新設し、eGFRが10以上45未満の腎機能障害患者への投与における注意事項、eGFRが10未満の腎機能障害患者への投与は推奨されない旨を記載する、③「重要な基本的注意」の項に、eGFRが15未満の腎機能障害患者への投与時の注意を追記する、④「特定の背景を有する患者に関する注意」の項に投与が推奨されない腎機能障害患者の範囲をeGFRが45未満から10未満に変更し、eGFRが10以上45未満の患者への投与時の注意を追記する、⑤「薬物動態」の項に、eGFRが10以上45未満の腎機能障害患者における薬物動態パラメータの推定値を追記する-こととされた。
詳細は、厚労省の「医薬安発0408第1号」を参照されたい。
(編集部・関根雄人)