CDIメディカル医療インサイト

(第10回)高齢化で進む歯科訪問診療
クリニックに広がる新たな地平

 ◇「全身的」な関わり

 --最後に、黒岡先生が実現されたい今後のビジョンについてお聞かせください。

 黒岡 現在、法人として管理栄養士を増員しており、患者さんに対して歯科診療だけではなく、栄養指導や生活習慣の指導も含めて向き合う「全身的」なアプローチが出来る体制を整えています。患者さんに健康感を持っていただくことを目指しています。

医療法人靖正会での勉強会
 この取り組みは始まったばかりで、まだまだ努力が必要です。現在は月に1~2回の頻度で法人内で勉強会をしています。歯科診療の専門家である歯科医師・歯科衛生士と、栄養指導の専門家である管理栄養士が互いに学び合い、能力を最大限に活用して患者さんに関わることができるように努力しています。将来的に管理栄養士のメンバーには、医療機関が持つNST(Nutrition Support Team=栄養サポートチーム)に栄養指導のプロ、多職種連携のプロとして派遣できるまで専門性を高めてもらいたいと考えており、法人として積極的な支援を続けていきます。

 --患者さんとの関わりが訪問に広がるとともに、歯科診療だけでなく全身的に広がっていることが分かりました。今後、歯科医師や歯科クリニックに対する社会の認識も変わってくるのではないかと感じます。本日はありがとうございました。

 黒岡 ありがとうございました。

 【用語説明】フレイル
 高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態。オーラルフレイルは、口腔機能の低下や食の偏りなどを含むフレイルの一つ。

 ◆新しい医療の開発

 歯科においても多職種連携による訪問診療が広がっています。現場では、試行錯誤をしながら対応している状況も垣間見えました。高齢者の患者との関わりは「歯を治療する」ことから「食べる喜びを維持する」ことへ広がり、診療目標の抽象度が高まっているように感じます。だからこそ、さまざまな職種の専門家が連携し合い、一人の患者へ対峙(たいじ)することが求められていますが、もともと専門分化の傾向にあった医療業界において、専門家同士が連携をすることは簡単ではないと改めて感じました。その中でも、歯科医師・歯科衛生士と管理栄養士による連携が生まれ、新しい医療が開発されています。今後は、このような取り組みを後押しする環境整備が進むことを期待します。(CDIメディカル・杉本宗優)


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