治療・予防

全身に原因不明の痛み
女性に多い線維筋痛症

 全身に原因不明の激しい痛みが起こる「線維筋痛症」。山王病院(東京都港区)心療内科の村上正人部長は「症状は痛みだけではなく、疲労感やしびれ、過敏性腸症候群、月経困難症、頻尿、めまい、耳鳴りなどが伴います」と話す。この病気の原因や治療法などについて聞いた。

線維筋痛症の診断法

線維筋痛症の診断法

 ▽ストレスが引き金に

 線維筋痛症の痛みは「体に風が当たっただけで痛みを感じる」「ガラスの破片が体内を巡っているかのような激痛がある」などと表現される。

 2004年に厚生労働省が行った調査では、国内の推計患者数は約200万人。ただし、「継続的な治療が必要な重症患者は数%で、薬物治療や軽い運動などのセルフケアで対処できる人がほとんど」と村上部長は説明する。患者の約8割は女性で、特に30~50代の中高年に多い。

 明確な原因は不明だが、脳の痛みを感じるシステムに何らかの異常があると考えられている。村上部長は「体質など遺伝的な要因に、環境要因が加わって発症するケースが多い」と話す。手術や出産、引っ越し、仕事や介護などの心理的・社会的ストレスが加わると、痛みをはじめとした身体症状や、睡眠障害、うつ状態などの精神症状が表れるという。

 ▽薬物治療に効果

 米国リウマチ学会の診断基準(1990年)によると、〔1〕広範囲の痛みが3カ月以上続く〔2〕全身18カ所を指で押して11カ所以上で激痛を感じる〔3〕原因となる別の病気が見つからない―の三つが当てはまることが条件だ。2010年には新しい基準が発表されており、旧基準と組み合わせて診断する。

 治療法としては、痛みを緩和する薬物療法が重要である。一般的な鎮痛薬や麻薬では十分な効果がなかったが、抗けいれん薬「プレガバリン」や抗うつ薬「デュロキセチン」が相次いで保険適用となり流れが変わった。「薬物治療で6~7割の人が痛みを緩和できるようになりました」と村上部長。このほか運動療法や温熱療法、認知行動療法やカウンセリングなどの心理療法も行われている。

 この病気が厄介なのは、身体的な症状だけでなく、精神的な症状を伴うことで複雑な病態になるため、診断が難しい点だ。村上部長は「身体症状と精神症状の両方を診てもらえるリウマチ専門医やペインクリニック、心療内科などに相談するのがよいでしょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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