特集

「プライドを持てる街」に
新病院の建設かけた願い
~熊本総合病院の軌跡と奇跡〔4〕~

円相場の推移と病院建設時期

 ◇デフレで建築費が圧縮

 いくら病院が黒字基調とはいえ、そこまでこだわったのでは、建築費用が相当かさむはずだ。「もし今なら大変な金額になっていたでしょう。建設計画が2年間頓挫していましたが、毎年トップの黒字を重ねる内にグループ内での新病院建設計画順位が1位に昇格し、2010年末に新病院建設に本部のゴーサインが出ました。この間にデフレが進んで建築資材の価格が下落。円相場は1ドル=76円の最高値となり石材などの輸入費も抑えられる最高のタイミングでした。デフレ、円相場のおかげで建設費を圧縮できたんですよ」

 玄関前の車止めには「患者さんがぬれないように」と幅12メートル・長さ50メートルのひさしをつけた。空中庭園に植える樹木も病院長自ら選んだ。「四季の移り変わりを感じられて患者さんにいい影響を与えるんじゃないかと思って」

 実際、足を運ぶと、病院というよりは一流ホテルのように風格がある。最上階には、予約制のフランス料理店があり、患者でなくても誰もが利用できる。

木漏れ日の散歩道

 病院は機能が第一であり、豪華な建物は必要ないという意見もあるが、島田氏は違った考えをもつ。「病院だけのことを考えて作ったわけではありません。地域の人が誇りを持てるような街づくりに貢献したい。いいものを造れば、これから続く若い人も世代を超えて自分の街にプライドがもてるようになる、地方の人口減ストップにも貢献する、と思うんです」

【熊本総合病院】

1948年に病床数100床の健康保険八代総合病院として開設。段階的に増床され、2000年には14診療科、344病床にまで拡大した。その後、経営が悪化して次々に医師が辞め、患者数は減少の一途をたどった。熊本県内のつぶれる病院ナンバーワンとまでささやかれたが、06年に病院長に就任した島田信也氏は徹底的な改革を断行。グループトップの黒字病院に生まれ変わった。新病院は、地域のランドマーク的な存在になり、街の活性化にも一役買っている。(中山あゆみ)(このシリーズは毎週金曜日に配信します)

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