たかが便秘、されど便秘
選択肢広がる治療薬
腹痛や腹部膨満感で生活の質(QOL)を低下させる便秘。女性や高齢者に多く、国内で便秘に悩む人は1000万人以上と増加の一途をたどっている。鳥居内科クリニック(東京都世田谷区)の鳥居明院長は「便秘の対処には、食事や運動、ストレスの軽減に加えて、治療薬をうまく使いこなすことがコツです」と話す。
便秘改善には生活環境・習慣の見直しを
便秘とは、本来体外に排出すべき糞(ふん)便を快適に十分量、排出できない状態をいう。高齢者では腸の運動機能の低下、若年者では腹痛を伴う便秘型過敏性腸症候群が原因となることが多い。「重症になると、硬くなった便で大腸に穴があいたり、トイレでいきみ過ぎてショック状態に陥ったりして、命を落とす危険さえあります」と鳥居院長。
便秘の原因となる病気があれば、その治療が優先されるが、鳥居院長は「便秘が起こっている状態を理解して、生活環境や習慣を改善することが大切です」と説明する。
食生活に関しては、食物繊維が豊富な食材や、水分や油分を適量取ることが便秘解消の第一歩だ。食物繊維は豆類、野菜、キノコ類、海藻類などに多く含まれる。
体を動かす習慣を付けることも重要で、鳥居院長は「ウオーキングやジョギングなどを、無理のない範囲で楽しむとよいでしょう。腹筋も鍛えられて、腸管の動きが良くなります」と話す。それ以外では、医師によるカウンセリングなど精神面へのアプローチが有効な場合もある。
▽エビデンスレベルの高い薬が登場
生活習慣を見直しても十分改善しない場合には、薬物療法を行う。長年、酸化マグネシウムや刺激性下剤のセンナなどが主に使われてきたが、近年、従来とは作用の仕方が異なり、エビデンス(科学的根拠)レベルの高い新薬が登場している。
2012年から使用できるようになったルビプロストンは32年ぶりに発売された慢性便秘症に対する新薬で、小腸に働き掛けて便を軟らかくして排便を促す作用がある。17年には、腸から水分を分泌させる作用と腸の痛みを和らげる作用を持つリナクロチドが便秘型過敏性腸症候群に対して発売された。さらに18年4月には、水分分泌と消化管運動の促進により自然な排便を促すエロビキシバットが慢性便秘症に対して発売されたばかり。
便秘薬を使い過ぎると、依存性が高くなると敬遠する人もいる。しかし、鳥居院長は「それを怖がるより、症状に合った薬を適量使って、完全な排便を目指すことが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/06 06:00)