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肝臓に中性脂肪が多くたまった状態を脂肪肝と言う。脂肪肝は、お酒を大量に飲み続けた人がなる「アルコール性」と、お酒をあまり、または全く飲まない人でもなる「非アルコール性(NAFLD)」に大別される。NAFLDの多くは食べ過ぎによる肥満やメタボリックシンドロームが原因だが、「正反対の痩せ過ぎでもNAFLDになる人がいます」と、大阪府済生会吹田病院(大阪府吹田市)の島俊英院長は指摘する。
NAFLDはアルコールを除くさまざまな原因で起こる脂肪肝の総称
食事で取った脂質や糖質は小腸で吸収されて肝臓で中性脂肪となり、タンパク質と結合。肝臓から筋肉や臓器に運ばれ、消費される。作られる脂肪と消費される脂肪のバランスが崩れると脂肪肝になる。肥満やメタボリックシンドロームの人のNAFLDは、食べ過ぎや運動不足のために消費分以上に作られた脂肪が肝臓で増えて起こる。
一方、痩せ過ぎの人のNAFLDは消費の障害が原因で、「栄養障害性脂肪肝」と呼ばれる。肝臓の脂肪は少ないが、結合するタンパク質の不足で筋肉や臓器に運ばれず、肝臓にとどまるため中性脂肪として蓄積する。
NAFLDは腹部エコー検査ですぐに分かる。「ただ、B型・C型肝炎ウイルスに感染していなければ、NAFLDは『たかが脂肪肝』として放置されがちです。肥満やメタボリックシンドロームでなければ、なおさらです」と島院長。
しかし、より進行していて肝硬変や肝がんを発症するリスクが高い「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」の場合もある。肝疾患は総じて自覚症状がなく、NASHもかなり悪化しないと、だるさやむくみ、黄疸(おうだん)などの症状は出てこない。中には、腹水がたまる肝硬変や肝がんに進行して初めてNASHが見つかるケースもある。
▽栄養状態の改善を
島院長は「痩せ過ぎによる脂肪肝でも、肝機能に異常があれば、NAFLDのうち単純な脂肪肝(NAFL)かNASHかを見極めることが大切です」と強調する。実際、島院長の所には〔1〕潰瘍性大腸炎やクローン病〔2〕腸や膵臓(すいぞう)の手術後〔3〕神経性食欲不振症などによる低栄養状態で極度に痩せているのに脂肪肝―の患者が紹介されてくるという。
NASHの診断には肝臓の組織を採取する検査が必須だが、患者の負担が大きい。そこで島院長らは、フィブロスキャンという特殊な機器を用いて肝臓の硬さや脂肪量を測定するほか、血液検査の結果からNASHの可能性を探っている。島院長は「個々の原因に応じたアプローチで栄養状態を改善すれば、肝臓の状態も機能も改善します。痩せているから脂肪肝でも問題ないと放置せず、肝機能異常があれば必ず専門医を受診してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/02/14 05:00)
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