一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏
(第8回)厳選されたスタッフ=JALの接遇に学ぶ
開業に当たって、スタッフはすべて新規に採用した。施設と麻酔科医、機械の準備係は協力病院に提供してもらうが、看護師、看護助手はクリニックの専属スタッフが務める。これも米国で学んできたことだ。
スタッフはホームページで常に募集し、応募があるたび頻繁に面接する。
「黒澤明監督の名作『七人の侍』という映画の前半は、人集めですよね。それと同じだと思って楽しんで やっています。でも面接しても、なかなか僕の基準に合う人はいなくて、ほとんど採用に至りません。島田勘兵衛の人柄に惹かれて次々と侍が集まるわけですから、僕はまだまだ未熟者ですね」
厳しい面接を通って採用されても、勤務状況がクリニックにふさわしくないと思えば、ちゅうちょなく辞めてもらう。その姿勢は、大変厳しい。
「まず僕の診療についてもらうのですが、言葉遣いが良くなければ、その都度注意します。きめ細やかさや患者の心情に気が付くかどうかというのは、ある程度持って生まれたものです。すぐに分かりますよ」
患者は長年、痛みで苦しんできた人が多い。診察中に泣きだす患者もいる。
「そういうときに、さっとティッシュペーパーを渡す。そういう気配りが自然にできない人は、うちには向いていないと思います」
◇マナー研修に参加
石部氏はNTT東日本札幌病院 時代に、病院長に提案しJAL(日本航空)主催の接遇マナー研修に参加したことがある。将来の開業など全く考えていない頃のことだ。たまたま、JALの機内誌に医療向けの接遇研修が掲載されていたのを目にしたのが、きっかけだ。
「これからは接遇の時代です。医師自らが接遇の仕方を学ばなければいけない。つきましては私を派遣して下さい」
院長の承諾を得て、短期間の研修を受けた。
「元国際線のキャビンアテンダントにさんざん注意されました。電話の応対の場面など、最初から『あ、それ駄目です』って言われました」
その後、講師を病院に呼び、医師向けや看護師向けの研修会を開き、患者への接し方を学んだのだという。
「その頃、時代が変わったのが分かりました。僕が研修医の時から段々と変わっていき、患者さんの要求が強くなり、クレームも増えてきました。これは、時代に応じてやっていかなければと思いました」
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(2017/06/15 16:00)