一流に学ぶ 日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏

(第10回)「重力」は不思議な世界 =本のページめくれることに感動

 ◇2度目帰還後、研究で活躍

米フロリダ州のケネディ宇宙センターで、スペースシャトル「ディスカバリー」の発射台に向かう向井千秋さん(最前列左)やジョン・グレン氏(前から2列目右)(1998年10月)【AFP=時事】
 帰還後4日目には重力に慣れ、当たり前になった。「とても寂しい気持ちになっちゃって。人間は環境に適応するから生きていかれるわけですが、紙1枚で重さを感じたあの時の感動をもう一度味わいたい。それに、宇宙飛行士で医者である私が役に立つミッションがまだあるって思った」

 帰還4年後の1998年10月に2度目のチャンスが訪れた。向井氏46歳。スペースシャトル「ディスカバリー」には、米上院議員のジョン・グレン氏も搭乗。62年にアメリカ人初の地球一周を行って以来2度目の宇宙だったが、当時77歳で史上最高齢飛行士ということでも話題になった。

 向井氏は2度目の帰還後、医師の経験を生かし、シャトルでの実験を支える地上要員や宇宙医学、宇宙生物学の研究者として活躍を続けた。

 「宇宙飛行士仲間は早々に大学教授などの要職に就いたのに、私はつい2年前まで宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士の身分のまま。昔の仲間たちから『なんだ千秋、まだ現役の飛行士やってるのか』なんて驚かれました」

 米航空宇宙局(NASA)は、スペースシャトルの使用を2011年に終了。宇宙での科学実験の舞台は、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」へと移された。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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〔第9回に戻る〕シャトルでの実験、分刻み=宇宙メダカ、話題さらう

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