こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療

大がかりな準備も今は昔?
~大腸内視鏡検査、患者の負担軽く~ 【第2回】

 今回は大腸カメラとも呼ばれる大腸内視鏡検査について解説します。この検査は事前の準備などに手間や時間がかかりますが、最近は受診者の負担を小さくするための工夫も導入されています。大腸がんの早期発見・治療のために、必要なら受診を検討しましょう。

内視鏡を使って診察する高木謙太郎院長

内視鏡を使って診察する高木謙太郎院長

 食事制限、下剤も使用

 大腸内視鏡検査はその名の通り、大腸に内視鏡カメラを挿入して腸の内部を観察する検査です。肛門から挿入されたカメラは、直腸→S状結腸→下行(かこう)結腸→横行(おうこう)結腸→上行(じょうこう)結腸と大腸内をさかのぼり、小腸とのつなぎ目である回盲部まで進みます。

 胃カメラと呼ばれる胃部内視鏡検査では、食事をやめるだけで胃が空っぽになり検査が可能になりますが、大腸の場合は便が残っていると腸の中を観察できません。便を全て排出するために下剤を飲む必要があり、この点が大きな違いと言えるでしょう。参考までに、私たちのクリニックでは①検査前日から食事を制限②前日に下剤を内服③当日は禁食の上で検査4時間前から本格的に下剤を内服—といった対応を取っています。

 ◇組織採取やポリープ切除も

 検査は一般的に、便に血が混じっていたり、下痢が止まらなかったりといった症状のある人や、検診の便潜血検査が陽性となった人に対して行われます。大腸の中に発生したポリープやがん、炎症があるかどうかを直接確認し、症状の原因を観察できます。観察中に所見があった場合には組織を採取して病理診断をしたり、ポリープがある場合にはサイズによってはその場で切除したりすることも可能です。

 大腸がんは昔はまれでしたが、戦後、1990年にかけて急速に増加。毎年10万人程度が大腸がんと診断されています。死者数も男女ともに多く、早期発見と早期治療が必要です。特に、40歳を超えたら発症リスクが高まるとされているため、定期的な内視鏡検査を受けるようお勧めします。また、一度検査をした後でも、①大腸がん内視鏡治療外科治療を行った②10個以上のポリープを切除した③20ミリ以上の大きなポリープの内視鏡治療を行った—という人は再発の可能性を考え、翌年の検査が必要です。

国立がん研究センターのがん種別統計情報より

国立がん研究センターのがん種別統計情報より

 ◇挿入困難や痛みある場合も

 大腸内視鏡検査のメリットは、何と言っても直接、腸の内部を確認できることです。CT検査などで調べる場合もありますが、診断能力の点では内視鏡に勝るものはありません。ポリープの摘除など、検査の際に診断と治療を兼ねた処置ができるのも好都合と言えるでしょう。

 デメリットもあります。カメラは曲がりくねった腸の中を進んで行きますが、おなかの手術をした経験がある人は腸が癒着(ゆちゃく)しているケースがあるため、検査中に痛みが出ることが珍しくありません。極端な痩せ形や肥満の人も内視鏡の挿入が困難な場合があります。

 また、腸の中をきれいにするため、食事を抜いて下剤を飲まなければなりません。空腹や頻回の排便に耐えられることも必要でしょう。組織生検やポリープの摘除は出血のリスクが伴うので、消化管穿孔(せんこう)など偶発的な合併症を起こさないためにも経験豊富な医師の診察を受けてください。

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