こちら診察室 依存症と向き合う

最終回 自助グループ、回復施設の役割 
医療に加え、社会資源の活用を ~久里浜医療センターの「今」~

 ◇日本独自の「断酒会」

 1935年に米国でアルコール依存症に悩む人々が「アルコホーリックス・アノニマス(AA;Alcoholics Anonymous)」を結成しました。最初にできた自助グループです。グループの中では実名を伏せるのが原則なため、アノニマス(匿名)という名称が使われています。

断酒会について説明する会員(手前2人。本文とは関係ありません)

 他にも、薬物依存症の自助グループ「NA(Narcotics Anonymous)」、ギャンブル依存症の自助グループ「GA(Gamblers Anonymous)」など、さまざまな依存症の自助グループが形成されてきました。日本には、独自の発展を遂げた全日本断酒連盟もあります。

 ◇理解不足は回復の妨げ

 自助グループに加え、いわゆる回復施設の活用も有効です。回復施設は生活全体の立て直しを目標に(1)依存症教育やミーティング(2)ボランティア活動(3)スポーツなどレクリエーション-などを行うほか、就労支援や住居確保、カウンセリングなども取り入れ、さまざまな形で社会復帰を促進しています。

 依存症からの回復には医療だけではなく、こうした社会資源の活用や支援が必要ですが、理解が進んでいないのが実情です。

 厚生労働科学研究によると、アルコール依存症者は推計約80万人、薬物依存症者が同じく約10万人ですが、医療機関を受診しない人が多いと推測されています。本人や家族が依存症との認識を持ちにくいことや、どこに相談すればいいか分からないなど、さまざまな要因が考えられます。

 ◇予防の一助にも

 知識不足は自身が依存症になった時の気付きを遅らせます。また、家族らが良かれと思ってしていたことが、実は依存症者を困らせてしまう行為であったり、時に回復の妨げになったりするケースもあるでしょう。

美濃部るり子氏

 こうした状況の改善に向けた啓蒙(けいもう)活動を手掛けるほか、患者本人や家族が依存症かもしれないと悩んだ時の身近な相談先としての役割は、保健所、精神保健福祉センターなどが担っており、不可欠な存在と言えます。

 依存症からの回復を目指す患者を少しでも増やし、少しでも円滑な回復につなげるには、私たちが依存症に対する知識や理解を深めることが大きな助けになります。依存症予防の一助にもなると考えています。(久里浜医療センターアルコール依存担当、精神科医師 美濃部るり子

美濃部るり子氏(みのべ・るりこ)
佐賀大学医学部卒。2009年から久里浜医療センター。アルコール依存症、認知症疾患を中心に診療

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