こちら診察室 依存症と向き合う

第6回 「認知行動療法」を知っていますか
対処方を増やし、柔軟に選択 ~久里浜医療センターの「今」~

 アルコールやたばこ、覚せい剤、ギャンブル、ゲームなど、人を依存させるものはさまざまですが、これらには共通点があります。依存性物質を摂取したり、依存性のある行動をしたりすると、脳内に快感物質が出るという点です。快感物質が出ると現実の嫌なことを忘れ、楽しい気持ちになります。そのため、ストレスや忘れたいことがあるときにはなおさら、明日も明後日もその薬物を摂取したい、その行動をしたい気持ちにさせられます。

 ◇脳内に快楽物質

 それでは、これらの物質を摂取し続けたり、行動し続けたりするとわれわれの脳はどうなるのでしょうか。快感物質がたくさん出続けている状態が普通であると、脳が認識するようになります。

文部科学省「ギャンブル等依存症指導参考資料」より

 いったんそうなってしまうと、「人間ドック前だからアルコールは控えておこうかな」とか「給料日前だからギャンブルはやめておこうかな」とか考えて控えると、脳内の快感物質が引いてしまいます。そして、この状態が異常事態だと認識するようになるわけです。

 異常事態を患者に知らせてアルコールを飲ませるようにさせたり、ギャンブルをやり続けたりするように指令を出している状態は「離脱症状」とか「禁断症状」と言われています。

 ◇かつては「否認の病」

 アルコール依存症の場合、酒が体内から抜けると(1)手が震える(2)ものすごく汗をかく(3)イライラする(4)気分が沈んで何もやる気がなくなる-といった症状が出ます。この「禁断症状」は非常に不快なものです。これを止めるために酒を摂取し続けなければならなくなるのが依存の形成メカニズムです。

 このような神経生理学的疾患である依存症を単に罰したり、強い意志を持たせたりすることだけで回復さるのは不可能です。

 以前、依存症は「否認の病」と言われ、治療においては「いかに否認を打破するか」に目標が置かれていました。自分で依存症を認めない人を治療するのは困難で、治療対象ではないとしていたのです。

 そして、否認を打破するために、治療者は患者を突き放し、患者自身に「自分は心身ともに限界であり、人生、底を突いたという自覚(底つき体験)を促す」ことが治療として行われていました。

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