福祉機関とサービス 家庭の医学

 精神疾患のなかには慢性的な経過をとるので医療に加えて福祉サービスが必要になってくる場合があります。そのようなサービスの概略を紹介します。

1.住居関係
 自立生活ができず、ケアにあたる家族もいないといった場合に、おもに利用されるのはグループホーム、ケアホーム、共同住居などです。最近は高齢者住宅の利用もふえてきました。アパート入居に際して保証人がいない場合などに受けられる居住サポート事業などもあります。居住先は病状、自立度、経済状況などに応じて選択されます。

2.職業関係
 就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援事業などがあります。就労移行支援は企業への就労を目指す人、就労継続支援は移行支援を受けたが就労に結びつかなかった人、就労定着支援は移行支援を経て就労し半年を経たがさらに支援を要する人が利用します。さまざまな法人が運営しています。そのほかに自治体がおこなっている職親・社会適応訓練事業や障害者職業センターのプログラムなどもあります。

3.生活支援
 日中の活動の場を提供する地域活動支援センター、自立訓練、生活介護を提供する事業所、ホームヘルプサービス、行動援護、重度訪問介護を提供する事業所などがあり、障害支援区分の認定を受ける必要がある場合があります。最近は2つ以上の事業を一体的に提供する多機能型事業所がふえてきました。

4.その他のサービス
・障害者年金…国民年金・厚生年金・共済年金などによるものがあり、初診日に加入していた年金によって種類が決まります。
・心身障害者扶養共済制度…障害者本人を受取人として保護者が加入する共済保険で、保護者が死亡したり重度障害になったときに支給されます。
・自立支援医療…通院医療費の公費負担制度で、精神障害で通院による治療を続ける必要がある人が対象になります。自己負担が医療費の1割に軽減されます。
・障害者手帳…比較的重度の精神疾患で長期間生活の制限を受けている人が対象です。NHK受信料の割引や税金の控除・減免が受けられ、公共交通機関の運賃割引や公共施設の利用料減免が受けられる自治体もあります。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)