くびの構造と役割

 くびは頭部・顔面を支えるだけでなく、主要な神経や血管が通り、咽頭(いんとう)、食道、喉頭(こうとう)、気管など、食べ物や空気の通過および発声をつかさどる臓器が存在し、唾液腺、甲状腺、上皮小体がある重要な部位です。
 くびの背側には頸椎(けいつい)と呼ばれる骨が連なっており、くびと頭を支えています。頸椎と周囲の筋肉がバランスをとり、頭の位置をコントロールしています。頸椎のうしろには、頸髄(けいずい)といわれる脊髄(せきずい)神経がはしっています。この神経は四肢、胸や腹部など、くびから下すべてに関係し非常に重要です。頸椎捻挫(むち打ち損傷)のような外傷や不良な姿勢をとると、くびの筋肉や骨に負担がかかり、痛みや神経障害の原因になることがあります。
 力を入れて頭を回すと、耳のうしろから鎖骨にかけて胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)があらわれます。この筋肉はくびを回したり傾けたりするときに使われます。
 胸鎖乳突筋のうしろには、頸髄から分かれた細い神経が出ています。これらの神経は、頸神経や腕神経と呼ばれ、後頭部、耳、くび、肩や腕、指の感覚や運動を支配しています。変形性頸椎症や胸郭(きょうかく)出口症候群などでは、この神経が障害を受け、痛みや指のしびれ、腕に力が入らないなどの症状が出ます。
 あごの下には顎下(がくか)腺という唾液をつくる組織があります。ふだんは触れにくいのですが、唾石(だせき)症などの炎症を起こすとはれてきます。唾液をつくる組織は、このほかに耳下(じか)腺、舌下(ぜっか)腺があります。
 くびの前面には、甲状軟骨、いわゆる喉仏(のどぼとけ)があります。特に成人男性では顕著にみられます。この甲状軟骨の裏に、喉頭と呼ばれる声を発する器官があります。喉頭はさらに気管につながり、気管は肺につながります。喉頭に病気が生じると、声がかすれたり、息苦しさを感じたりします。
 喉頭のうしろには、下咽頭と呼ばれる食べ物の通過する器官があります。ここが病気になると、のどの違和感や、飲み込みづらさ、痛みなどを感じます。
 甲状軟骨の高さで胸鎖乳突筋の内側を指で強く押すと、血管の拍動を感じます。この血管は総頸動脈と呼ばれ、これから分かれる枝が、くび、顔、頭(脳)に血液を運ぶ重要な血管です。さらに、動脈の外側で、胸鎖乳突筋の深層には太い頸静脈がはしっています。

■内分泌器官
 甲状軟骨の下方、気管をまたいで甲状腺があります。甲状腺は、左右の葉と呼ばれる部分と、まん中の峡という部分からなります。からだの新陳代謝を促進するホルモンを産生します。甲状腺に炎症が起こると、ホルモンのバランスがくずれ、体調に異常をきたします。たとえば、ホルモンが過剰に分泌されると、動悸(どうき)・頻脈(脈が速い)・手のふるえ・発汗などの症状が、ホルモンが不足すると全身倦怠(けんたい)感・眠気・便秘・月経血の増加などの症状をきたします。また、腺腫(良性腫瘍)やがんなどが生じても、気づかないで過ごしてしまいがちな部位です。

■リンパ器官
 くびには、たくさんのリンパ節が存在します。全身をめぐる血液同様、からだのすみずみまでリンパの流れはひろがっています。リンパ液は、無色のたんぱく質に富む液体でリンパ管という管の中を流れ、脂肪などの栄養や生体の防御をつかさどるリンパ球を運んでいます。
 リンパ球には、細菌やウイルスなどの異物を取り込んだり、それらを攻撃する物質(免疫〈めんえき〉抗体)をつくるはたらきがあります。そして、リンパ管の途中にリンパ節があり、文字どおり「ふし」として存在します。さらに、リンパ液を送るポンプのはたらきもしています。
 いっぽう、リンパ節はリンパ球をつくったり、細菌などを取り込んだリンパ球を濾過(ろか)する役目を担っています。そのため、リンパ節自体は取り込んだ細菌により容易に炎症を起こし、はれたり痛みをもったりします。たとえば、扁桃腺(へんとうせん)に感染を起こすと近くのリンパ節がはれ、痛みを伴います。また、くびやのどにがんが生じ、リンパ管内まで及んでくると、そのさきのリンパ節でがん細胞はせきとめられ、リンパ節自体はがん細胞によりはれてきます。これをリンパ節転移と呼びます。
 なお、幼小児はリンパ節が発達しているので、正常でもリンパ節を触れることがあります。