自然気胸〔しぜんききょう〕 家庭の医学

 なんらかの原因で肺表面に孔(あな)があいて肺の中の空気が胸腔(きょうくう)に漏れだし、肺が縮んだ状態です。

[原因]
 肺に病気がないのにもかかわらず起こるものを原発性自然気胸といい、肺が破れやすい病気に付随して起こるものを続発性自然気胸といいます。また、検査や治療の経過で肺に孔があいて起こるのが医原性気胸です。
 原発性自然気胸は、やせた体型をした若年者に多くみられるのが特徴です。続発性の背景となる病気としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD) 間質性肺炎があり、そのほか、女性に特有の病気である月経随伴性気胸やリンパ脈管筋腫症、Birt-Hogg-Dub?症候群などがあります。

[症状][診断]
 胸痛、呼吸困難、せきなどが出現します。胸痛は突然起こることが多く、呼吸困難は高度の気胸でなければ気づかれないこともあります。
 診断は、胸部単純X線検査で肺が縮んだ像が観察されれば確定します。

[治療]
 軽度の気胸であれば、安静にしていることで自然に孔が閉じふたたび肺は膨張します。
 肺の縮まりが大きければ、胸腔にチューブを挿入し胸腔から空気を抜き、肺がふたたび膨張するようにします。最近では、外来治療可能な簡易型ドレナージキットによる治療も普及してきました。こうした治療でも肺がふくらまない場合には、胸腔鏡下や開胸による外科手術をし、肺の破れた組織を修復します。
 また、外科手術がむずかしい場合には、胸腔に炎症を起こさせる物質を注入して人工的に胸膜炎を起こし、胸膜を癒着させて治療する方法もあります。
 なお、特殊な気胸として緊張性気胸があります。これは肺の孔から胸腔に漏れた空気が非常に多くなり、胸腔内圧が高まり、血圧が低下してショックをきたす事態です。この場合は高まった内圧をすぐに下げる必要があり、迅速な胸腔穿刺(せんし)が必要です。

【参照】胸壁と縦隔の病気:気胸

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 助教〔呼吸器内科学〕 光石 陽一郎)
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