特発性食道破裂〔とくはつせいしょくどうはれつ〕 家庭の医学

 食道の病変がなくても、食道が穿孔(せんこう)する(破裂して孔〈あな〉があく)ことがあります。ほとんどは暴飲暴食して嘔吐(おうと)したときなど、食道の内圧が急に上昇したときにみられます。
 通常、穿孔するのは下部食道の左側です。嘔吐後、突然激痛が心窩部(しんかぶ:みずおち)や胸部に起こります。呼吸が苦しくなったりショック状態になることがあります(ブールハーフェ症候群)。
 すぐ、病院で治療を受けてください。CT(コンピュータ断層撮影)検査や水溶性の造影剤による食道造影検査で診断は容易です。
 発症しても早期に治療すれば、手術せずに胸腔(きょうくう)にチューブ(ドレーンといいます)を挿入するだけで保存的に治ることがあります。ただし、治癒するまでには数週間かかります。発症から時間がたったり、重症になった場合は手術が必要です。
 手術は、発症後24時間以内なら穿孔部を縫合(ほうごう)閉鎖しますが、炎症が激しいときは、食道を切除して再建することもあります。治療が遅れると、死亡率は30~50%といわれています。

(執筆・監修:順天堂大学 特任教授〔食道胃外科〕 鶴丸 昌彦)
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