胃と十二指腸の病気に関する最近の進歩
近年、慢性胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんの一部がヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染によることが判明し、一般にもピロリ菌が広く知られるようになりました。
潰瘍や慢性胃炎はピロリ菌感染による「感染症」として再認識され、2000年からは保険適用による除菌治療が開始されました。2013年には保険適用範囲がひろがり、二次除菌まで可能となりました。
潰瘍治療も大きく変化しています。30年前までは、出血を伴う潰瘍では手術が主流でしたが、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の登場により、潰瘍は「薬で治す」病気へと変わりました。その後、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場し、さらに近年ではP-CAB(カリウム競合型アシッドブロッカー〈酸分泌抑制薬〉)によって、より強力な酸抑制が可能となりました。P-CABの導入により、ピロリ菌除菌の成功率も向上し、治療の選択肢がひろがっています。
早期胃がんの発見率も、内視鏡技術の進歩により大きく向上しています。一部の早期胃がんは内視鏡的に粘膜を切り取るだけで治療が完了し、胃の温存が可能となりました。早期発見・早期治療のため、積極的な内視鏡検査が推奨されています。
2021年には「十二指腸癌診療ガイドライン」が初めて作成され、乳頭部がん以外の十二指腸腫瘍に対する診断や治療が標準化されつつあります(乳頭部がんは胆道がんとして標準化)。これにより、内視鏡技術を活用した診療の質が向上しています。
また、潰瘍などからの出血に対しても内視鏡による治療が進歩しています。出血部位を特定し、金属クリップや薬剤を使用するほか、通電焼灼(しょうしゃく)やレーザーによる止血も用いられます。
(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)
潰瘍や慢性胃炎はピロリ菌感染による「感染症」として再認識され、2000年からは保険適用による除菌治療が開始されました。2013年には保険適用範囲がひろがり、二次除菌まで可能となりました。
潰瘍治療も大きく変化しています。30年前までは、出血を伴う潰瘍では手術が主流でしたが、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の登場により、潰瘍は「薬で治す」病気へと変わりました。その後、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場し、さらに近年ではP-CAB(カリウム競合型アシッドブロッカー〈酸分泌抑制薬〉)によって、より強力な酸抑制が可能となりました。P-CABの導入により、ピロリ菌除菌の成功率も向上し、治療の選択肢がひろがっています。
早期胃がんの発見率も、内視鏡技術の進歩により大きく向上しています。一部の早期胃がんは内視鏡的に粘膜を切り取るだけで治療が完了し、胃の温存が可能となりました。早期発見・早期治療のため、積極的な内視鏡検査が推奨されています。
2021年には「十二指腸癌診療ガイドライン」が初めて作成され、乳頭部がん以外の十二指腸腫瘍に対する診断や治療が標準化されつつあります(乳頭部がんは胆道がんとして標準化)。これにより、内視鏡技術を活用した診療の質が向上しています。
また、潰瘍などからの出血に対しても内視鏡による治療が進歩しています。出血部位を特定し、金属クリップや薬剤を使用するほか、通電焼灼(しょうしゃく)やレーザーによる止血も用いられます。
(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)