胃と十二指腸の病気に関する最近の進歩

 近年、慢性胃炎胃潰瘍・十二指腸潰瘍胃がんの一部の原因の一つがヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)であることがわかり、一般の人々もピロリ菌の名前を知るようになってきました。
 胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因がすべてこのピロリ菌ではありませんが、潰瘍や慢性胃炎がピロリ菌の感染という一種の感染症として新たに認識されるようになり、潰瘍や胃炎に対する考えかたが一変されました。このピロリ菌を殺すことを「除菌する」といいますが、わが国では、この除菌治療は2000年より保険適用が認められ、2014年に保険適用範囲がひろがり、二次除菌まで可能となりました。
 潰瘍に対する治療法も以前とは大きく変化しています。30年くらい前までは胃・十二指腸潰瘍で出血した場合の多くは手術がおこなわれていましたが、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)という薬剤の出現によって潰瘍は「手術で切る」病気から「薬で治す」病気へと変わってきました。
 また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)というさらに強力な薬剤が出現し、潰瘍の治療の主役は手術治療からプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬を中心とする薬物療法に取って代わられました。
 なお、日本胃癌学会からは「胃癌治療ガイドライン(医師用)」が出版され、これまでに3度の改訂をおこない、胃がん治療の全国規模の標準化が進められています。
 近年の内視鏡技術の進歩によって早期胃がんの発見頻度は上昇しており、治療面においても、早期胃がんのうちのあるものは内視鏡的に粘膜を切りとることで治療が完了し、胃を温存できることも多くなってきました。早期発見・早期治療のためにも積極的に内視鏡検査を受けることが望ましいと考えられます。
 また、胃潰瘍などからの出血に対しても緊急的に内視鏡検査をおこない、出血している部位を見つけたうえで内視鏡の小さな穴から止血のための金属クリップや薬剤を入れて治療できるようになっています。