その他のヘルニア

 腹部のヘルニアでもっとも多いのは鼠径ヘルニアで、それについで頻度が高いのは大腿ヘルニアと臍(さい)ヘルニアです。
 大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアよりもやや下の位置、大腿の付け根あたりに膨隆がみられるヘルニアで、大腿輪と呼ばれる構造から出るものです。高齢の女性に多く、嵌頓(かんとん)することが多いといわれています。治療は、鼠径ヘルニアとほぼ同様です。
 臍ヘルニアは、臍のところから出るヘルニアで、小児と成人女性に多くみられます。小児例では、出生時に臍ヘルニアがみられても、多くの場合は1歳までに自然に閉鎖するため、様子をみることが多く、3~4歳になってもヘルニアがみられる際は手術をおこないます。成人例の多くは女性で、妊娠を契機にヘルニアが出てくることが原因としてはもっとも多く、自然に閉鎖することはないので、手術での治療を考えることが一般的です。
 それ以外に、横隔膜から腹部の臓器が脱出する横隔膜ヘルニア、骨盤内の閉鎖孔と呼ばれる構造に腸管がはまり込む閉鎖孔ヘルニアなどがあります。いずれも体表からは見えない部分のヘルニアで、腸閉塞などの症状を呈することがあり、緊急で手術が必要になることがあります。

(執筆・監修:自治医科大学附属病院 病院長/自治医科大学外科学講座 教授〔消化器外科学〕 佐田 尚宏
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