肛門の特徴

 肛門は消化管の最終部分で、便やガスをコントロールしながら排泄(はいせつ)する管腔(かんくう)臓器です。ふだんは収縮しているので、外から見ても肛門縁から皮膚の部分しか確認できません。肛門は形態が口唇(こうしん)と似ています。外から見える部分と内側の部分があって、口唇では 口の中に入ると口腔粘膜に移行していくように、肛門も奥では直腸粘膜に移行していきます。長さ4cmくらいの管状の構造をしており、体毛の生えている皮膚から徐々に色や艶(つや)やなめらかさが変化して粘膜に移行していくのです。内肛門括約筋(かつやくきん)と外肛門括約筋の二重構造による協調運動と、その内側の肛門クッションによって排泄時以外では気密性が保たれているのです。奥行きをもって収縮・弛緩をくり返している筒状の臓器なので、専門的には肛門管とも呼びます。
 下図に示すように、肛門管は発生学上、内胚葉(ないはいよう)由来の直腸と外胚葉由来の皮膚が接合している部分であり、両者の要素が併存する特殊な臓器です。


 その接合部は歯状線(しじょうせん)といって、肛門管のほぼ中央に見ることができます。歯状線より直腸側は痛みを感じませんが、皮膚側は痛みに鋭敏です。肛門管の奥半分は痛みを感じない領域なのです。人さし指の長さで全領域を触れることができますが、そこには痔はもとより、悪性・良性の腫瘍性疾患や機能性疾患まで多種多様な疾患が発生します。代表的な肛門の病気として痔核(じかく:疣〈いぼ〉痔)、裂肛(れっこう:切れ痔)、痔瘻(じろう)があり、3大痔疾患ともいわれ肛門疾患の約8割を占めます。痔核は男女とも半数を占めますが、裂肛は女性、痔瘻は男性に多い傾向があります。
 内臓の病気と比較すると肛門の病気は症状がはっきりしており出血、疼痛(とうつう)、しこり触知、搔痒(そうよう)感、違和感などがありますが、診察することによりすぐ診断できるものがほとんどです。診察方法は施設や医師によって異なりますが、問診、視診、触診、直腸指診、肛門鏡検査などが共通した診察法です。それでも不十分なときに、大腸内視鏡検査、肛門管超音波検査、CT検査、MRI検査、その他の特殊検査が加えられます。
 肛門の病気は排便習慣を中心に生活習慣によるものが多く、多くは良性疾患ですので、肛門の病気にかかっても生活習慣の改善や保存的治療によってよくなるものも多いのです。一言で「痔」といっても、それぞれその病態も形態も異なり、治療の適応や治療法も異なります。もちろんすべてが手術を必要とするものでもありません。また、同じ肛門の症状であっても直腸や大腸に併存するポリープや腫瘍による症状もありえますので、大腸の検査(内視鏡検査など)をしておくと安心です。