がんとはどのような病気か
病気は大きく、損傷、感染、腫瘍、機能障害などに分類することができます。損傷はやけどや骨折に代表されるように、物理的要因などによりもたらされる病気であり、感染は細菌やウイルスが生体内に侵入することで引き起こされる病気です。機能障害は何らかの原因で正常な機能が狂ってしまう状態で、糖尿病、不整脈、精神病などがこれに相当します。腫瘍は自分自身の細胞が変化して、正常なコントロールが利かなくなる病気です。これらの病気は単独で発生することもありますが、損傷が感染につながったり、腫瘍のために感染が起こったりするなど、相互に関連しています。
腫瘍は正常な細胞の遺伝子に異常が発生して、引き起こされる病気です。遺伝子に異常が起きると、細胞の増殖の制御ができなくなり急速に大きくなったり、本来あるべきでない部位に移動して増殖する(転移)など、生命を脅かすことがあります。このような性質をもつ腫瘍を悪性腫瘍(がん)と呼びます。腫瘍でも小さいうちに細胞の増殖が停止したり、きわめて増殖速度がおそいもの、そして転移などの認められない腫瘍が良性腫瘍です。
正常な細胞の遺伝子に異常が起きる原因はいろいろあります。細胞には本来寿命があり、新しい細胞と入れ替わっています。入れ替わる頻度は臓器によって異なり、たとえば胃の粘膜上皮細胞などもその寿命は約3日間で、古い細胞は剥がれ落ちてしまい、新しい粘膜細胞と入れ替わっています。そのときに遺伝子がコピー(複製)されて新しい細胞が誕生するわけですが、コピーをくり返しているうちに遺伝子に小さな異常が起きます。ささいな異常であっても、それが長年の間に蓄積されてゆくと、ついには正常から逸脱した細胞に変化(がん化)してしまうのです。
このような異常を引き起こす最大の要因は時間です。つまり、長い間コピーをくり返しているうちに、小さな異常が蓄積してがん細胞ができるのです。このような理由で、がんは一般的には老化に伴って発生する病気なのです。コピーのエラーを引き起こしやすくする要因は、時間以外にも身のまわりにたくさんあります。たとえば、わたしたちは自然に宇宙からくる放射線を浴びていますが、放射線は遺伝子に損傷を与えます。大気中の有害物質や、食物中に含まれる種々の発がん物質も多くは遺伝子に作用して、これに障害を与えます。感染や熱などの物理的刺激も、遺伝子の異常を引き起こす要因になります。いっぽうで、遺伝子の損傷が起きても、これを修復する能力が本来備わっていますが、時間とともに修復しきれないほどのエラーが発生・蓄積し、この蓄積が一定以上のレベルに達すると、がん細胞に変化すると考えられています。
なお、老化や種々の発がん因子のほかに、もともと遺伝子に異常のある場合があります。そのような異常がある場合には、若年であってもがんが発生することがあります。そうした遺伝子異常のなかには、異常が遺伝することがわかっているものもあります。近親者でがんが多発する家系では、遺伝子を検査することで原因遺伝子があきらかになる場合もあります(遺伝子検査)。そのような遺伝子を受け継いでいる場合には通常より、より頻回のがん検診などが必要になります。
腫瘍は正常な細胞の遺伝子に異常が発生して、引き起こされる病気です。遺伝子に異常が起きると、細胞の増殖の制御ができなくなり急速に大きくなったり、本来あるべきでない部位に移動して増殖する(転移)など、生命を脅かすことがあります。このような性質をもつ腫瘍を悪性腫瘍(がん)と呼びます。腫瘍でも小さいうちに細胞の増殖が停止したり、きわめて増殖速度がおそいもの、そして転移などの認められない腫瘍が良性腫瘍です。
正常な細胞の遺伝子に異常が起きる原因はいろいろあります。細胞には本来寿命があり、新しい細胞と入れ替わっています。入れ替わる頻度は臓器によって異なり、たとえば胃の粘膜上皮細胞などもその寿命は約3日間で、古い細胞は剥がれ落ちてしまい、新しい粘膜細胞と入れ替わっています。そのときに遺伝子がコピー(複製)されて新しい細胞が誕生するわけですが、コピーをくり返しているうちに遺伝子に小さな異常が起きます。ささいな異常であっても、それが長年の間に蓄積されてゆくと、ついには正常から逸脱した細胞に変化(がん化)してしまうのです。
このような異常を引き起こす最大の要因は時間です。つまり、長い間コピーをくり返しているうちに、小さな異常が蓄積してがん細胞ができるのです。このような理由で、がんは一般的には老化に伴って発生する病気なのです。コピーのエラーを引き起こしやすくする要因は、時間以外にも身のまわりにたくさんあります。たとえば、わたしたちは自然に宇宙からくる放射線を浴びていますが、放射線は遺伝子に損傷を与えます。大気中の有害物質や、食物中に含まれる種々の発がん物質も多くは遺伝子に作用して、これに障害を与えます。感染や熱などの物理的刺激も、遺伝子の異常を引き起こす要因になります。いっぽうで、遺伝子の損傷が起きても、これを修復する能力が本来備わっていますが、時間とともに修復しきれないほどのエラーが発生・蓄積し、この蓄積が一定以上のレベルに達すると、がん細胞に変化すると考えられています。
なお、老化や種々の発がん因子のほかに、もともと遺伝子に異常のある場合があります。そのような異常がある場合には、若年であってもがんが発生することがあります。そうした遺伝子異常のなかには、異常が遺伝することがわかっているものもあります。近親者でがんが多発する家系では、遺伝子を検査することで原因遺伝子があきらかになる場合もあります(遺伝子検査)。そのような遺伝子を受け継いでいる場合には通常より、より頻回のがん検診などが必要になります。
(執筆・監修:公益財団法人 がん研究会 有明病院 名誉院長 山口 俊晴)