妊娠初期に必要に応じておこなう検査 家庭の医学

□トキソプラズマの抗体検査
 妊娠中にトキソプラズマという原虫に初感染すると、胎児に異常(水頭症、知能障害)が起こるとされています。ペットが感染源となりますが、ほとんどネコからの感染です。また、十分に火が通っていない生肉を食べている場合にも注意が必要です。

□サイトメガロウイルスの抗体検査
 妊娠中にサイトメガロウイルスに感染すると、胎児に小頭症、脳室拡大、難聴などを起こすことがあります。広く分布するウイルスで、上の子が保育所や幼稚園で感染し、尿や唾液を介して母親が感染する場合が多いとされています。有効な治療法がないため予防が大切で、上の子と食べ物や食器を共有しないことや、子どもとの接触機会が多い人は、妊娠中は普段にも増して石けんを使った手洗いの励行や唾液による飛沫(ひまつ)感染対策をします。

□成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)のウイルス検査
 成人T細胞白血病リンパ腫のウイルスをもっているか否かの検査で、ATLウイルスは母乳を介して感染します。ただ感染しても発症は40歳以上で、しかも1500人に1人という頻度です。もしウイルスが確認されたら、感染を防ぐためには母乳を与えないようにしなければなりません。

□エイズのウイルス(HIV)検査
 エイズウイルスを調べるもので、わが国でもしだいに母児(母子)感染が増加しています。感染が判明しても抗ウイルス薬を服用し、帝王切開をすることによって胎児への感染を防ぐことが可能となっています。

□C型肝炎ウイルス(HCV)検査
 C型肝炎ウイルスの有無を検査するもので、母児感染の可能性もあるとされています。
 C型肝炎は、長い年月をかけて肝硬変、肝がんとなる可能性がありますが、インターフェロン療法などで治療が可能です。B型肝炎と違ってワクチンがないので新生児に対する対策はまだ確立されていませんが、頻度は低いと考えられています。

□クラミジア
 性感染症の一つで、最近感染者が多いので、ほとんどの病院で検査をおこなっています。血液で抗体をみる方法と、頸(けい)管粘液検査の方法があります。流早産の原因となったり、分娩(ぶんべん)時に児に感染すると結膜炎や肺炎をひき起こします。抗菌薬を夫婦で服用します。妊娠中期以降に検査をおこなう病院もあります。

□非侵襲的出生前遺伝学的検査(Non-invasive prenatal testing:NIPT)
 母体血液中に含まれる胎児のDNAを分析して、ダウン症などの染色体異常を推定する検査です。おもに高年齢や胎児の染色体異常が示唆された場合などに、登録施設でのカウンセリングによる十分な情報提供のあと、内容を十分に理解したうえで検査を希望する場合に受けることができます。

□その他
 輸血歴がある場合などにおこなう不規則抗体検査などがあります。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
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