漢方薬のおもな副作用 家庭の医学

 漢方薬といえども薬である以上、それなりの副作用がないとはいえません。西洋医学の薬にくらべれば重い副作用の起こる頻度はずっと低いのは確かですが、漢方薬だから安全で副作用がないと盲信してはいけません。

■間質性肺炎
 小柴胡湯(しょうさいことう)の副作用として間質性肺炎が起こり、適切な治療をおこなわなければ、死亡など重篤な結果となる可能性があることがわかりました。
 一般的にいえることは漢方薬を服用のあとに発熱、せき、呼吸困難などがあらわれた場合には、間質性肺炎の発症が疑われますので、ただちに服用を中止して主治医に連絡、あるいは医療機関を受診する必要があります。
 間質性肺炎については、柴朴湯(さいぼくとう)、柴苓湯(さいれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、大柴胡湯(だいさいことう)、柴陥湯(さいかんとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)、清肺湯(せいはいとう)、乙字湯(おつじとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などでも発症した報告が少数ながらあります。非常にまれな副作用ですが、注意が必要です。

■偽(ぎ)アルドステロン症
 甘草(かんぞう)は過半数の漢方薬に配合される生薬ですが、副作用として、浮腫、体重増加、血圧上昇、低カリウム血症などの偽アルドステロン症が起こる可能性があります。漢方薬の服用を開始する前に、血圧や体重、むくみの有無、血清カリウム値を測定しておくとよいでしょう。そして、甘草を含む漢方薬の服用後に、これらの症状があらわれた場合には、服用を中止し、漢方薬を変更する必要があります。
 この副作用に気づかずにいると、体のだるさや筋力の低下、そして高血圧があらわれます。

■麻黄を含む漢方薬で起こりうる副作用
 麻黄(まおう)を含む漢方薬は、胃腸虚弱者、高齢者などに用いる際に注意が必要です。
 麻黄には、エフェドリン、プソイドエフェドリンなどが含まれ、交感神経興奮作用、抗炎症作用、鎮痛作用などがあります。敏感な人では、不眠、排尿困難、動悸、頻脈、発汗過多、精神興奮、食欲不振、胃部不快感、吐き気、胃痛、腹痛、便秘、下痢などの不快な副作用が出ることがあります。
 特に狭心症などの心臓病患者には心臓発作を起こすことがありえますので使いません。また、腎機能障害、不整脈、重い高血圧症の人も使わないほうが安全です。

■附子を含む漢方薬で起こりうる副作用
 附子(ぶし)にはアコニチンなどが含まれ、大量に服用すれば、心悸亢進(こうしん)、のぼせ、舌のしびれ、吐き気などがあらわれることがあります。附子は真武湯(しんぶとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)などに配合されています。
 いずれも高齢者、陰証の人に用いる漢方薬です。決められた服用量を守ること。異常を感じたら服薬を中止し、すぐに医師・薬剤師に相談してください。

■肝機能障害
 漢方薬で肝臓の障害が起こることもあります。肝機能の異常が漢方薬によるものであるか否かは、漢方薬の服用を開始するときに血液検査をしておくとよくわかります。漢方薬は、漢方を勉強している医師に処方してもらうのがいちばん安全な理由がここにあります。
 内臓脂肪の改善として広く用いられている防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)では肝機能の異常が比較的多くあらわれるようです。

(執筆・監修:医療法人社団誠馨会 千葉中央メディカルセンター和漢診療科 顧問 寺澤 捷年
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