総動脈幹遺残〔そうどうみゃくかんいざん〕

 大動脈と肺動脈が分離せず、心臓から1つの大血管が出る病気です。

 この大血管を総動脈幹と呼び、大きな心室中隔欠損の上から出ています。総動脈幹から左右の肺動脈が出て、そのさきが大動脈になります。多くの場合、肺への血液量は増加し、乳児期早期から心不全症状が出現します。
 そして総動脈幹の弁の逆流が合併すると、心不全はさらに増強します。肺動脈狭窄(きょうさく)を伴い肺血流量が減少している場合は、チアノーゼが出現しますが、心不全症状は軽くなります。
 治療は、内科的には利尿薬、強心薬の服用をしますが、心不全が改善しないことも多く、また早期に肺高血圧が合併してきます。そのため、乳児期から積極的に手術がおこなわれています。手術は心室中隔欠損を閉じ、肺動脈を大動脈から切り離し、右心室から肺動脈へ血液を導く管をつけるという複雑な内容です。総動脈幹の弁の狭窄や逆流があると、弁のかたちをととのえたり、弁を替えたりすることも必要です。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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