完全大血管転位〔かんぜんだいけっかんてんい〕 家庭の医学

 大動脈が右心室から、肺動脈が左心室から出ている病気です。

 全身から右心房に戻ってくる酸素の少ない静脈血が、右心室からふたたび全身へ流れていくので、生後早期からチアノーゼがあらわれます。3つのタイプがあり心室中隔欠損がないⅠ型ではチアノーゼが強く、プロスタグランジンE1を静注して動脈管を開いたり、バルーンカテーテルによる心房中隔裂開術(カテーテルにつけた風船を左心房でふくらませ、右心房へ引き抜くことによって、心房中隔の孔〈あな〉を大きくする)をおこなってからだを循環する血流と肺を循環する血流の交通を保ちます。心室中隔欠損を合併するⅡ型ではチアノーゼは軽いですが、肺高血圧と心不全を生じます。心室中隔欠損と肺動脈狭窄(きょうさく)を合併するⅢ型ではチアノーゼがおもな症状です。
 手術は、Ⅰ型とⅡ型では大動脈と肺動脈をつなぎ換えるJatene手術を、生後2週間以内におこないます。Ⅲ型では幼児期に、右心室内で心室中隔欠損から大動脈弁に当て布(自己心膜やウマ心膜など)を当てて道をつくり、右心室から肺動脈へは管をつなぐ手術をします。

【参照】心臓の病気:大血管転位

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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